病気から身を守る 植物の持つ機能を解明
最近、暖かくなってきて、桜が一斉に開花、暑いくらいの陽気になってきたと思ったら、急に2月の寒さに逆戻り。福島では満開の桜に雪が積もってしまいました。
こんなに気温の変動が大きいと、風邪をひいてしまう人もいるのではないでしょうか。
私たちは風邪をひいたら薬を飲みますが、植物は薬を飲むことはできません。
そんな植物が病気になったときに自らを守る仕組みが奈良先端科学技術大学院大学で解明されました。
植物が病気になる時には、病原菌が細胞内へ侵入します。
そのとき、細胞膜で病原菌を認識する仕組みがあることが知られています。
また、イネではその時タンパク質(OsRac1)が免疫機構のスイッチとして働くことがわかっていましたが、このスイッチをONにする仕組みはこれまでまったくわかっていませんでした。
奈良先端科学技術大学院大学の島本教授らは、このスイッチがOsRacGEF1というタンパク質の働きによってONになることを発見しました。
しかも、このスイッチは病原菌の侵入からわずか3分以内にONになることも明らかになりました。
こんな短い時間で植物は免疫システムを稼働させるのです。
すると、植物体は抗菌性化合物を合成したり、細胞壁を強化したりと、病原菌に抵抗する機能が活性化します。
実際に、今回発見されたタンパク質(OsRacGEF1)の働きを抑えたイネではいもち病への抵抗性が低下してしまい、いもち病菌を感染させると感染拡大を防ぐことができませんでした。
この植物の免疫スイッチの機構が解明されたことで、病菌に強い、免疫力の高い植物の開発が進みそうです。
農薬に頼らない、「病気に強い植物」が生まれることで、これからの人口増加に伴う食糧消費量の増加にも対応できると期待されています。