【読み物】討論で生まれた「?」を、ICTを用いた物理実験で「!」にする()

同志社中学校・高等学校

山崎 敏昭 先生

教頭も勤めながら教員仲間で研究会を組織して研究も続けている山崎先生。2009年には理系の大学1年生3,800名へアンケートし、日本の高校物理全体では2割は生徒実験をしておらず、6割は5回に満たないという事実を明らかにした。現在は、「少しの予算で、みんなが実践できる授業案」が必要と、その開発と普及を行っている。

 

海外の物理教育をチームで学ぶ

物理の授業は、とりわけ「実験」が課題だと感じていた山崎先生。2001年に京都・和歌山の教員とともに、英国で導入されたばかりの、実験を中心に探究活動を行う「アドバンシング物理」の研究会を立ち上げた。分厚い教材を高校教員と、大学教員を含む30 人ほどの会員で精査し、公開講座による授業検証を続けた。「減少と孤立化が進む物理教員において地域や私公立間、高大連携のこのチームができたことが一番の価値かもしれない。」と語った。

 

実験の前に「確かめたい!」と思わせる

2006年の物理教育国際会議で、近年米国で展開されている「アクティブ・ラーニングで物理概念理解が格段に高まる」という報告に惹かれ、アドバンシング物理研究会で新たな研究を始めた。その結果、2011年、概念定着が難しいとされる「加速度」の授業で顕著な効果を示すことができた。

授業では速度・加速度の基本概念を伝えた後、「重りの付いたヒモで後に引っ張られる台車を、前方の距離センサーに向かってポンと押された時の、台車の速度-時間グラフと、加速度-時間グラフを予想せよ」というテーマを与えグループ討論を行った。検証のための演示実験を行い、得られた結果と予想の違いについて再度ディスカッションを促した。生徒同士の討論によって、気付かなかった疑問点が洗い出され、「どうして予想と違ったのか」というように個人個人が考えと現象を突き合わせることができた。同様の手法を複数の学校で行った結果、複数の学校で、高い概念理解が証明された。

 

新世紀型物理教育の基盤をつくる

これまでの実践研究を通して、海外の研究成果を取り入れることで、概念理解が進むこと、日本の物理教育カリキュラムに導入できることは明らかになった。ただ、「どんな手法も効果的に活用してこそ意味を持つ。学生が頭を働かせて能動的に課題に取り組むモードを作りだすことが重要」と、先生は語る。「大型予算がとれない学校でも取り組めるような、授業カリキュラムのかたちが必ずある」。授業という最前線の現場で、生徒ともに、仲間とともに、山崎先生は物理教育の研究を続けている。