深海をアイデアにナノテクノロジーが誕生 海洋研究開発機構
しぼりたての牛乳は濃くておいしい!と感じたことはありませんか?
加熱殺菌という点もありますが、おいしさの秘密は脂肪分にあります。
「水と油の関係」と言われるように、水と脂肪分は溶け合いません。
牛乳では脂肪分は水に溶けているわけではなく、脂肪球と呼ばれる丸い形で分散しています。
しぼりたての牛乳では脂肪球が大きいため、「味が濃い」と感じます。
身近で市販されている牛乳では、脂肪球を小さく砕いて均一にし牛乳のように、水の中で小さな油滴が均一に分散している液体をエマルションと呼びます。
水でも油でもない独特な性質を持ち、化粧品や医療品など、様々な用途での応用が期待されています。
現在では、油滴を「小さく・早く・均一に」作る方法が研究されています。
海洋研究開発機構と横浜市立大学の研究チームは、直径が100nm未満の油滴を水に分散させたエマルションを、わずか10秒以内に作ることに成功しました。
その方法は、海底の熱水噴出孔をヒントに開発されました。熱水噴出孔のような高温高圧環境では、水は液体でも気体でも固体でもない超臨界流体という通常とは全く性質が異なる状態になり、油と自由に混ざり合います。
その状態の水から油滴を分離させれば、エマルションができるのではないかと考えました。
また、熱水噴出孔から吹き出た水は、冷たい海水によって急激に冷やされます。
それらをヒントに、実験室で250気圧・337℃の環境を作り、水と油を混ぜたのち、急激に冷やしてみると、直径61nmの油滴が分散したエマルションができたのです。
海底という日常とはかけ離れた自然環境をヒントに、新しいテクノロジーが生まれました。
自分の好きなこと以外にも目を向けることが発見や発明につながるのかもしれませんね。
参考:http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20130514_2/
無重力である宇宙で実験を行うことで、新たな医薬品の開発につながる発見もあったそうです。
極限環境にはまだまだ発見のタネが眠っていそうですね。