昆虫の脚は歯車仕掛け

昆虫の脚は歯車仕掛け

学校や家で、みなさんが毎日見ているアナログの時計は、秒針が1回転すると分針が1目盛り分、分針が1回転すると時針が1時間分だけ正確に動きます。

それぞれの針がずれることなく完璧に同調して動くよう、大小さまざまな歯車が使われています。

このように、いくつかの部品の回転スピードを変えたり、ずれることなく同調させて動かしたりするために使われる歯車のしくみが、なんと生き物のからだの中でも使われていることがわかったのです。

イギリスでよく見られる小さな昆虫Issuscoleo-ptratusは、強い脚の筋肉で1mもジャンプすることができます。

ケンブリッジ大学のマルコム・バロウズさんは、若いIssusの左右の後ろ脚のつけ根に1列ずつ、歯車のような構造を見つけました。

歯と歯の間は20nm(ナノメートル:1mmの100万分の1)と非常に小さいのですが、左右に並んだ歯が正確に噛かみ合っています。

まっすぐジャンプするには、左右の脚を同時に、同じスピードで動かす必要がありますが、Issusは脚のつけ根にある歯を噛み合わせることによって、両脚をずれないように同調させていたのです。 

人間は、部品から部品へと正確に力を伝えるた めに歯車というしくみを発明しましたが、Issusは、同じしくみを使った精密な「機械仕掛け」の脚を自然に獲得していたのです。

昆虫のからだからはどこか機械のような印象を受けますが、まさか本当に機械仕掛けだったとは……。自然界が生み出すさまざまなしくみには驚かされるばかりです。(文・上原政樹)