強まる地元進学志向で考えられる弊害

強まる地元進学志向で考えられる弊害

NHKが全国のおよそ200の大学にアンケートを行ったところ、地元から進学してくる若者が増えていると答えた大学が60%に上り、地元志向が高まっていることが分かりました。
専門家は「不況や就職難の影響で、就職に有利かどうかを重視して大学を選ぶ傾向が強まり、資格の取得につながる学部が地方に増えていることが背景にあるのではないか」と指摘しています。

これは大学側にとったアンケート結果。実際に入学してくる学生についてそのような傾向があると感じているようだ。全国で800弱の大学数なのでおおよそ20〜25%程度から調査をしたことになる。

この傾向は今年になって突如現れたものではない。

  1. 2013.2.1 地元大学に進学する人が多くなった理由は? リクナビ進学ジャーナル
  2. 2013.7.31 「大学進学は地元で」5割 今春入学者「離れたい」は18% 日経新聞
  3. 2013.9.13 安全・地元・資格 3つのキーワードから大学入試の傾向を読み解く Benesse教育情報サイトヘッドライン
  4. 2009.6 地元入学率の低い県・高い県 代々木ゼミナール
  5. 2001.11 わが国における大学進学移動の動向と変化

5については1971年から2000年の30年をまとめてあり興味深い。この時点では、地方大学の収容力が低いままで、たくさんの学生を収容出来ない事も都市への流入を加速させる理由の一つだと考えられていた。また、学びたい学部が無ければ地域を離れやすくなり、そうでなければ残りやすいというのは想像に難くない条件だろう。これについては4の資料を見ると県別の傾向がみられるので面白い。

大学のキャパシティについて

現在の大学収容力についてはこのページに分析されている。

都道府県別の大学収容力 データえっせい

東京と京都では,算出された収容力が100%を越えています。これらの都府では,18歳人口全員が座っても,まだイスが余る勘定です。それもそのはず。全国782の大学のうち,138大学(17.6%)が都内に立地しているのですから。

東京は大学が多い。

2013年の大学収容力地図 データえっせいより

このように、地域によって大学収容力に違いがあるので、キャパシティの大きな所は先程の記事の中にも書かれている通り進学率が上がります。

マックスは京都の138.5%ですが,京都も,人口比を勘案すれば多くの大学が設置されていると判断されます。前回の記事をみて,「京都の進学率が高いのが意外」とツイッターでつぶやいていた方がおられましたが,上表をご覧になられていいかがでしょうか。

現在の学生の意向について

2013年の調査ではこうなっている(3より)

大学選びで重視した項目(複数回答)は「学びたい学部・学科・コースがある」が75%で最多。「校風や雰囲気が良い」(48%)、「自分の興味や可能性が広げられる」(47%)が続いた。

過去の調査と比較すると、「自宅から通える」「学費が高くない」「寮や奨学金などが充実している」の3項目は2回連続で割合が増えており、進学費用の低さを重視する傾向が強まっている。一方で、「校風や雰囲気がよい」「伝統や実績がある」「有名である」は2回連続で減少した。

大学卒業後の進路では「地元に残りたい」が42%に達し、「地元を離れたい」の18%を大幅に上回った。

 1を見てみるとこうある

地元大学への進学が増えている背景には何があるのだろうか?

「さまざまな要因がありますが、ひとつには少子化の影響です。子どもが1人か2人の家庭が多く、なるべく長く手元においておきたいと考える保護者が増えています。また全入時代に突入し、過酷な競争を避ける傾向もあります。頑張って人気大学や難関大学を目指すより、堅実で入りやすい地元大学を選ぶ傾向があるのです。もちろん、リーマンショック以降の経済的な問題もあるでしょう」と語るのは河合塾本郷校校舎長の箱崎恒さん。

少子化と経済的な要因によっているという見方のようだ。

強まる地元進学志向で考えられる弊害

最近の分析ではやはり経済的な要因が大きそうだ。都市の大学へ出す経済力がなくなってきている。

それによって起こることは、希望する進学先を選べなくなるという事だろう。

データえっせいさんに書かれている通り、大学収容力には地域差がある。大学や学部に多様性と収容力がない地域に住んでいる学生が経済的な要因によって地元に残らざるをえないとしたら、そこに生まれた時点で選択肢が限られてしまう。

私自身は子供の頃からやりたかった「超電導」の研究をしたいと思って「電気電子工学科」に進学した。(結果として超電導は物理学科だと知るのだが、ちゃんと高校時代に色んな人に相談すべきだった事を後悔したのは研究室選択の説明会の時で、既に遅し…)

地元は横浜だが、関東一帯が進学先候補となるので選択肢には事欠かなかったし、選んだ時点で悔やむことは無かった。

そうではない人も多くいるのだろう。

教育機会については誰しも平等に与えられたほうが良いはずだ。それをなすためには経済的な要因を解消するためにも、無返還の奨学金制度の充実が望まれる。私自身は日本が今投資すべき先は子供たちだと信じて疑わないが、そういう方向に導いていける政治家に頑張って欲しいなと思う。