異分野からのアイデアで新たな波を起こせ!

異分野からのアイデアで新たな波を起こせ!

ローム株式会社 研究開発本部 部長 谷内 光治  さん

ショッピングモールでは、温度や湿度、火災、混雑状況の把握、 セキュリティの管理に。自動車にはエンジンやブレーキのコントロール、乗客用安全装置などに。いま、世の中は多種多様なセンサであふれている。これまで個々のセンサを使った監視や状況把握が主だったセンサネットワークが、新たな局面を迎えている。

 

センサの組み合わせで生まれるものは?

位置や加速度などの「動き」、温度や 明るさや気圧などの「環境条件」を測定するのはもちろん、特定の波長光を捉えて物体を透視する「広帯域画像センサ」や、健康・心理状態に応じて変動する脈 波を計測する「脈波センサ」など、世界トップクラスのセンサラインナップを誇るローム株式会社。これまで、感 度の向上やバリエーションを増やしていくことに重きが置かれていたセンシング技術に対して、個々のセンサをネットワーク化することで得られる複合的な情 報と、そこから導き出される最適解を提案することにより、私達の生活スタイル を一変させようと試みている。

 

飛躍への鍵『EnOcean』

同社がセンサのネットワーク化を加速させるキラーコンテンツとして手がけているのが、シーメンス社の技術をベースに確立された微小電力無線通信『EnOcean(エンオーシャン)』だ。その電力使用量は、Bluetoothの1/100、Wi-Fiの1/1000にも満たないため、例えば「照明スイッチを押す」という物理動作だけで発生するわずかな電力で、情報通信を行える。電池(バッテリー)・ 配線・メンテナンスが不要という利点を活かし、様々なセンサ技術と組み合わせたモジュールが生まれはじめている。「様々なものがスムーズにつながりはじめ、社会はとてつもなく便利になっていますが、まだ完全じゃない。EnOceanでもう一歩先に進めたいのです」。20年以上LSIの研究・開発に携わってきた谷内光治さんはこう話す。

 

可能性の大海原へ、帆を上げろ!

この革新的なモジュールの活用先はセンサネットワークにとどまらない。配線不要であることから全く新しいコンセプトのスイッチや、電池不要であることを活かした24時間365日の監視を可能にするシステムが誕生するなど、アイデア次第で活用の幅は無限に広がっていく。「もしかすると、いわゆる電気電子専攻ではない異分野の研究者のアイデアこそ、新しい活用につながっていくのかもしれません」。谷内さんはリバネス研究 費ローム賞による若手研究者とのコミュニケーションを通して、同社の強みを活かしたセンサネットワークの更なる飛躍はもちろん、EnOceanの新たな活用事例が生まれる可能性に期待を寄せている。インターネット技術を「Eメール」が広げたように、EnOceanという新たなツールが一気に社会に広がるような「アプリケーション」を生み出すのは誰か。未知の可能性を秘めた海への船出が、いま始まったのだ。