世界を変える日本の小麦

世界を変える日本の小麦

komugi

給食でいつも人気の揚げパンやピクニックに欠かせないサンドイッチなど,今やすっかり日本人の主食といえるパン。その原料となる小麦は,ほとんどが外国から輸入されており,日本でつくられているのは国内で食べられている量のたったの3%だけです。しかし,世界中で育てられている小麦は,日本生まれの小麦の子孫たちなのです。

さかのぼること50年,1960年代の世界は,爆発的な人口増加と世界的な農作物の不作により食料生産に不安を抱えていました。このままでは世界中で飢餓が起きてしまうかもしれない……。当時育てられていた小麦は,肥料を多く与えると,背丈が高いために自分の穂を支えきれず倒れてしまい,収穫できる量が限られていたのです。その状況を変えたのが,岩手県の農業試験場で育てられていた「農林10号」という小さな小麦の品種でした。背が50cmほどと低く,丈夫な茎をもち,たくさんの穂をつけても倒れない強さをもっているのが特徴です。これは,農林10号がもつ「Reducedheight(Rht)」遺伝子という小麦の背を低くする遺伝子によるもの。そのしくみはまだすべてが解明されていないものの,ジベレリンという植物成長ホルモンの働きを妨げるためと考えられています。1950年代には,アメリカのボーローグ博士らにより,このRht遺伝子を受け継ぐ小麦の改良品種が生み出されました。たくさんの穂をつけても倒れない,肥料を十分に活用することができる小麦が世界中に普及することで,小麦生産量を激増させることができ,食糧危機を救ったのです。現在,世界で栽培されている小麦の多くにこのRht遺伝子が受け継がれています。

日本発の農林10号が世界で活躍する一方,日本国内のパン用小麦の自給率はとても低い状態です。それは,パンに使える強力小麦が日本の気候に適さないことが原因でした。しかし,この状況も変わりつつあります。品種改良により日本の気候でもよく育つ超強力小麦として「ゆめちから」という品種が誕生したのです。世界の飢餓を農林10号が救ったように,今「ゆめちから」が日本国内で革命を起こしています。

 

敷島製パン株式会社(Pasco)と株式会社リバネスは,中高生と一緒に学校の中で国産小麦「ゆめちから」を栽培し,自分が食べるパンを自分でつくるという研究に挑戦しています。

「ゆめちから」をもっと知りたい人はこちら

http://www.pasconet.co.jp/yumechikara/

中高生が学校内で「ゆめちから」を栽培中

http://www.yumechikara.com/