企業における女性研究者のキャリアアップは難しい?

企業における女性研究者のキャリアアップは難しい?
研究者の「研究以外の部分」の生き方や考えるべきことを紹介 研究者たちのライフデザイン [テーマ]企業における女性研究者のキャリアアップは難しい?

研究者の「研究以外の部分」の生き方や考えるべきことを紹介
研究者たちのライフデザイン
[テーマ]企業における女性研究者のキャリアアップは難しい?

研究者における女性の割合

crr1_03国内の女性研究者数がついに10万人を超えた(12万7800人)というニュースが、総務省から2014年4月14日付で発表された。2003年と比べて4万人程度増え、研究者全体に占める割合は14.4%と過去最高となった。内閣府が推進する男女共同参画は一定の成果を上げていると言えるだろう。

業界によって偏る研究者の女性比率

crr2_03 企業の研究者に絞ってみてみよう。すると、全産業における企業研究者人口のうち女性の割合は8%に下がる。「BioGARAGE」読者に関係の深い業界では比較的高い割合を占めており(食料品製造業では29.1%、医薬品製造業では23.8%等)、業界によって偏りがあるのが分かる(図2)。
 一方で海外の企業の例を見てみよう。英国の製薬系企業AstraZenecaは女性研究者の割合が50%である。EU15ヵ国の中でも科学技術分野の進学率や企業の女性研究者の割合が低いと言われるドイツの製薬企業Schering AGでは29%であった⑵。
 女性研究者の割合がEUやアメリカの国々と比較すると著しく低い水準である日本だが、業界を限ってみると女性研究者の活躍の場が広がっていることが分かる。

研究者の積極性が未来を変える

 では女性研究者のキャリアアップについてはどうなっているのか。代表的な内資製薬企業の平均値を見てみると、2010年以降も女性の正社員の割合23%に比して課長職以上の割合は5%にとどまっている⑶。この数値は研究以外の業務の従業員も含まれているので一概には言えないが、女性は研究職においても指導的地位に登用されにくいという状況が想像される。2003年に発表された男女共同参画基本計画においては、2020年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度とすることが明言されているので、企業側の努力がより一層求められるという状況だ。
 そこで、多くの企業が目標を持って時短制度やメンター制度など様々な環境整備に取り組み始めている。しかし、各企業での取り組みはなかなか見えにくい。また企業での取り組みとは別に、自身の研究の夢に向かって働き方を選びながらキャリアを重ねている女性も多いが、その現状を知る機会も得にくいのが現状だ。そこで、次号では研究キャリアを重ねている女性研究者にお話しをお聞きする。

⑴ 総務省 統計トピックスNo. 80 「我が国の科学技術を支える女性研究者-科学技術週間(4/14-4/20)にちなんで-」
⑵伊藤裕子「企業の科学技術人材における女性比率の拡大―EUの政策と日本の課題 ―」科学技術動向, 12月号, 2003
⑶ポジティブアクションポータルサイトhttp://www.positiveaction.jp/pa/index.php