清潔で快適な睡眠環境を提供していくには? レイコップ・ジャパン株式会社

清潔で快適な睡眠環境を提供していくには? レイコップ・ジャパン株式会社

レイコップ・ジャパン株式会社 プロダクトマネジメント部

写真左 部長 一樂 淳史さん
写真右 R&D課 森本 孝 さん

ふとんクリーナーという新しい市場を切り拓いたレイコップ・ジャパン株式会社は、2014年の6月にR&Dセンターを設立した。そこでは、除去すべき対象であるハウスダストやダニについて、毎日徹底的な試験が行われている。オープンイノベーションが主流になってきた現在、メーカーは研究開発の結果をどのように捉え、新製品のテーマを創出していくのだろうか。

メーカーの研究の醍醐味とは?

一樂 現在R&Dセンターで毎日バリバリ実験をしていますね。私たち企画をする人間にとっては、自分が仕掛けたプロダクトが世に出ることなんですけど、実験する森本さんにとっての研究開発の醍醐味ってどんなところにあるのでしょうか?

森本 案外、毎日コツコツデータを積み上げるところに喜びがありますよ(笑)。研究開発は仮説検証のプロセスですから、仮説を立てて、実際に検証をして、そのデータをしっかり解析すると物事の理解が進みます。私の性に合っているというだけかもしれませんが、研究開発に従事している人たちならわかってくれるのではないでしょうか。

一樂 そんな森本さんの喜びが、取得したデータとして、社に蓄積しているわけですね。そもそも、レイコップのプロダクトである「ふとんクリーナー」は、10年以上前に社長のリ・ソンジンが2年という年月をかけて、研究開発したものです。内科医としてアレルギー体質の患者さんと向き合っていた社長が、どうしたら患者さんの症状を軽減できるかと考え抜いた結果、「ハウスダストアレルギーのアレルゲンの主な原因といわれているダニを、効率よく集塵・除去すればよいのではないか」という仮説を導き出しました。この創業のストーリーを思い返すと、仮説を検証して、研究開発したものをプロダクトとして世に出していくという考え方が、会社の基盤となっています。

森本 もちろんデータを積み重ねることは、簡単ではありませんし、実際に行っていることを一般の方に話すと、キョトンとされることもあります。例えば、私はダニの飼育をしていて毎日世話をしています。これは、「ふとんクリーナー」で除去すべき、アレルゲンであるダニを徹底的に調べつくすことを目的としています。研究対象であるダニの生態を調べるためには、それらを飼育する技術や知見が重要になります。特に、私たちが詳しく研究している「チリダニ」という種類のダニは、基本的には人を噛まないので、その存在が見落とされがちです。しかし、チリダニの死骸や糞が、人にとってのアレルゲンになるので、その除去は、清潔で快適な睡眠環境を実現するためには必須なのです。そこまで、基礎的な知見を獲得した上ではじめて、プロダクトである「ふとんクリーナー」の機能の検証ができます。そこまで突き詰めた研究開発であると、胸を張って言いたいですね。

一歩踏み込んで、新たなプロダクトやサービスを実現したい

一樂「清潔で快適な睡眠環境」という言葉が出ましたが、「ふとんクリーナー」という寝具まわりのプロダクトを扱っている私たちとしては、避けては通れないキーワードです。これまで、寝具のアレルゲン除去を中心に考えてきましたが、これからより良いプロダクトを創るためには、睡眠という現象自体をもっと理解しないといけないのではないかと考えています。人間はそもそも、1日の3分の1の時間は寝て過ごしているわけです。それ程の時間を過ごす、人間にとって大切な時間をサポートすることで、より健康な毎日を提供できると信じています。

森本 私も、「ふとんクリーナー」を研究すればするほど、寝具そのものや、睡眠をとっている人間そのものにまで、興味が広がってきました。それは、私たちのプロダクトでアレルゲンを除去できたとして、さらに快適な環境ってなんだろう、と私の想像力も広がってきたということかもしれません。

一樂 睡眠は、環境面と生理学的な面の2軸で考えることが必要だといいますよね。今、うちで自信を持ってお客様に提供できているのは、その環境面である寝具をケアすること。それもアレルゲン除去というところに注力しています。ここからは、まだ構想でしかありませんが、例えば、音、光、においとか、肌触りのような、人が快適と感じる睡眠環境を実現するようなプロダクト開発をしたいですね。

 私がよく考えるのは「ふとんふかふか」という表現です。ふかふかの定義って、人それぞれじゃないですか。でも、ふとんを天日干ししたら、気持ちいいってみんな言いますよね。その要素ってなんなんだろう、と不思議に思います。これも、ふとんを含めた睡眠の環境面と、人側の認知で考えないとですね。じゃあ、それを再現可能なかたちでどうやってプロダクトとして実現するか。ここが重要だと思います。

森本 そこにたどり着くために研究すべき要素は無数にありますね。それこそ、睡眠について研究されているアカデミアの研究者の方も多くいらっしゃいますし、共同研究のようなかたちで知見をいただきながら、一歩一歩進んでいきたいですね。

睡眠をオープンイノベーションする

一樂「清潔で快適な睡眠」ということを考えると、私たちは清潔さについては自社のプロダクトで実現できていると自負しています。ただ、快適な睡眠という分野は、広大でまだまだ、手に余る領域と言っていいかもしれません。そこで、今回は「リバネス研究費・レイコップGOOD SLEEP研究賞」というアカデミア向けの研究助成金を、リバネスと共同で設置しました。私たちが快適な睡眠について、より深く学びたいという気持ちと、ふとんクリーナーだけに限らず、将来「快適な睡眠」を実現するプロダクトを共同開発できるような研究者と出会いたいというのが、私たちの願いです。

森本 基礎から応用まで、睡眠に関わるあらゆる研究と、私も出会いたいです。その中で、もちろんすぐにプロダクト開発に結び付くものであれば、共同研究につなげたいですし、中長期的にディスカッションすべきトピックが見つかることも期待しています。私たちからは、プロダクト開発のプロフェッショナルとして、研究の事業化に興味ある研究者の方に対して、ノウハウをお伝えできるかもしれません。我々メーカーと、専門性が異なるアカデミアの研究者と、お互いに一歩踏み出して新しいプロダクトやサービスを生み出していけたら最高だな、と考えています。

一樂 今まで私たちは寝具まわりを扱っていましたが、睡眠という軸で考えれば、活躍のフィールドは寝具に留まりません。例えば、長時間のフライトでの睡眠環境。研究者の方も学会などで、ヨーロッパやアメリカに向けて長時間のフライトをすることも多いと思います。これを快適にするためにはどうしたらよいのでしょうか。現代では人が睡眠をとる環境が多様です。様々なシチュエーションで清潔さと快適さを兼ね備えた睡眠をとることができれば、現代人の生活がより良いものとなりますよね。

森本 人間は宇宙で暮らしたとしても、やっぱり睡眠をとりますよね。10年後も20年後も、どこで暮らしたとしても、人にとって睡眠はなくてはならないものであると考えます。そんな、人間生活の根幹にあることだからこそ、全力で取り組む価値があります。JAXAだって、宇宙環境での睡眠を研究していますし、将来、宇宙ステーションで生活するときにレイコップのプロダクトがあるといいですよね。そのとき、私は宇宙環境下でのダニの生態を研究しているかもしれませんが(笑)。

一樂 淳史 さんプロフィール

1971年生まれ。1994年パイオニア株式会社に入社。ミニコンポや ホームシアターシステムの商品企画を担当。社内外でプロジェクトを結成。設計・研究開発・デザイナーをとりまとめて、数多くの業界初、AV・音響機器の製品化を実現。商品開発から売り場までを一気通貫でディレクションできることに喜びを感じる毎日。その後は、海外営業、新規事業開発を歴任し、2015年7月より現職。

森本 孝 さんプロフィール

臨床検査技師の免許を取得後、治験専門クリニックで院内CRCとして第一相試験において、アトピー性皮膚炎治療薬、腎性貧血治療薬、抗血小板作用、血管拡張作用薬、抗うつ剤、C型肝炎治療薬などの様々な臨床試験業務に携わる。その後立ち位置を変えCROとして、第二相試験において、アトピー性皮膚炎治療薬や臨床研究のモニタリング業務に携わる。現在は、レイコップ・ジャパンに転職し、研究開発に携わる毎日。

第29回リバネス研究費 レイコップ GOOD SLEEP研究賞

募集分野

睡眠に関わるすべての研究

対象者

修士課程、博士課程の学生およびポスドク

採択件数

1件

助成内容

研究費50万円

応募締切

2015年11月30日(月)24時まで

担当者より一言

赤ちゃんからお年寄りまで、すべての人の健康にとって清潔で快適な睡眠環境は不可欠なものです。本研究費では、睡眠に関わるすべての研究についての申請を募集します。睡眠科学、睡眠医学、神経科学、脳科学をはじめ、アレルギー、睡眠障害、睡眠環境、建築、寝具、睡眠と音響、睡眠と香り(アロマ)に関する研究など、睡眠に関する研究であれば分野は問いません。睡眠に関わる商品を開発・販売してきたメーカーとして、レイコップは、応用研究から基礎研究まで、睡眠研究に携わる研究者を応援します。

皆様のご応募お待ちしております。