ITを武器に活躍する 新たなフィールドは、異分野にあり アメリエフ株式会社

ITを武器に活躍する 新たなフィールドは、異分野にあり アメリエフ株式会社

他の人が目を向けていない「異分野」にこそ、自分の活躍の場所があるのかもしれない。

バイオベンチャーとして設立され、社員全員がバイオ系だったアメリエフ株式会社は、2015年、IT業界で活躍している須田仁之さんを迎え、次のステージに向けて加速しようとしている。そんなアメリエフの経営陣の3名に、ITで活躍したいあなたの、新たな挑戦の場を紹介してもらおう。

全く知らない生物の世界に、ITとの親和性があった

須田 誰でも0から1を作ることに挑戦できることが魅力だったITの世界は、上場する企業も増えてきていて、少しずつ成熟してきているんですよね。でも、ここ10年で見ると、時価総額1000億円以上の大きさで上場する企業は、ほぼゲームなんですよ。それが、少しつまらないなと思い始めていたときに出会ったのが、アメリエフだったんです。正直IT以外の理系の分野にはあまり接点がなかったので、ずっと研究ばかりしていて堅い、というイメージしかありませんでした。山口さんのプロフィールを事前に見ていたのですが、フランスで研究とかすごいじゃないですか。話通じるかな、と思いましたね(笑)。でも、実際に話してみたら、すごく物腰の柔らかい熱い人で、とても面白かった。

山口 実は、私は理学部を卒業して、すぐに飲食業に就職したんです。コミュニケーション力はかなり鍛えられました。でも、1年ほど働いたところで、やはり研究がやりたくなってきて、仕事を辞めて理化学研究所の遺伝子多型研究センターに就職しました。それが2000年ですから、ゲノムプロジェクトが盛り上がっていた時期です。DNA情報の多様性から生物を理解していこうという、バイオインフォマティクスが注目されてきた頃でした。

須田 IT以外のサイエンスは全然わからなかったので、『Newton』のバックナンバーを買いあさって、読みました。それで、生命科学の分野ではDNAの話が一番しっくりきましたね。試薬を混ぜて反応を見て、というような実験が主体の分野だったら自分は無理だと思いますが、DNAってつまりデータじゃないですか。

山口 そうです。そのデータをうまく解析することができれば、健康や、病気の予防にも寄与できる、その人に合った治療法も見つかる。子どもの頃から、病気で人の命が失われることに無力感を感じていたのですが、手に入れた化学とバイオインフォマティクスの知識で、その解決に挑戦してみようと思ったのです。でも、博士号取得のためにフランスの研究所に行ってみて、自分は研究者向きではないな、と思いました。寝食を忘れるほど没頭できるぐらいじゃないと成果は出ないんじゃないか。自分は、研究をするよりも、人とコミュニケーションして新しいモノを作りたい。ならばビジネスの世界に行こう。そう思って、理研時代にお世話になっていた先生が作った、オーダーメイド医療を目指すベンチャーに入ったのです。

須田 人間を創り上げるDNAデータのどこが違うと、何が起こるのか、というのを解析していくことで、「もっと自分に合った薬や食事を選ぶ方法はないのか?」という日常で誰もが関心を持てることを最適化できる。それは、人がどうやったらお金を払うかとか、明日も継続するかといった分析をしているIT業界にいる人間には、わかりやすい話です。しかも、「健康」や「病気」という分野で世の中の役に立てる。

山口 今ならドンピシャなんですが、バイオインフォマティクスの情報が少なかった当時はまだ早いビジネスで、うまくいきませんでした。膨大なゲノムの情報に対して、そのデータを料理できるバイオインフォマティシャンが圧倒的に少なかったのです。ならば、それを補う会社を作ろう!と思ってアメリエフを立ち上げたんです。

バイオ系はそろった、今こそエンジニアだ!

須田 アメリエフ、という社名の由来は?

山口 「効率を上げる」という意味のフランス語から取りました。フランス人の、仕事の生産性も上げて、遊びの生産性も上げるという考え方がいいな、と思って。創業後は、まずは大学の研究室向けにサービスを開始しました。研究で得た遺伝子情報を、それぞれの研究目的に合わせてデータ解析する受託サービスによって、研究室におけるインフォマィシャンの不足を補おうと思ったのです。

 私は、創業後すぐにアメリエフに入りました。当時は社員が3名しかいなかったので、ゲノム解析をやりながら、セミナーに行っては研究者とネットワークを作る日々でした。研究者の「こんな解析をしたい」というニーズに応えるために、自らの専門性を高め続け、病気の原因となる「遺伝子の変異」を効率よく発見する方法や、薬剤処理細胞やがん細胞で起こる遺伝子の働きの違いを検出する解析手法をチームで開発していきました。昨年は、アメリエフがお手伝いした研究が世界的に権威ある学術誌『Science』に出たのはとてもうれしかったです。

山口 社員のほとんどはバイオ系の大学院卒で、生命科学の知識は豊富でもバイオインフォマティクスの知識や技術はほとんどないメンバーで始まりました。勉強と実績作りを重ねて、アカデミアの研究を一歩進めるほどの情報解析の力はつきました。いよいよ、次の一歩を踏み出すときが来たと思っています。

 ここからは、病院や製薬企業などをターゲットに「健康」「医療」といった市場に乗り出していきます。このDNA配列を持っている人にある治療を行ったときの効果がどうだったか、どんな予防が効果的だったかといった情報は集まれば集まるほど精度が上がっていきます。個人個人のゲノム情報に基づいて治療方針を決めたり、健康維持のためのアドバイスをしたりといったことが可能になるのです。アメリエフは、そのプラットフォームとなる会社を目指していきます。そのプラットフォームを一緒に構築してくれる、エンジニアに来てもらいたい。

須田 DNAのことは詳しくなくていい。新しいアイデアをどんどん出して、システムを組んでいけるチャレンジャーが必要だね。

山口 そうです。それを実現するための律速は「人」。データは集まっているのですが、それを束ねられるシステムエンジニアがまだいない。それが問題なのです。まさに絶好のタイミングで須田さんと出会うことができました。創業当初からかかわってくれていた金さんもCOOに迎え、新たな挑戦がここから始まります。

同じ船に乗ってこそ、異分野の化学反応は生まれる

須田 メディカルインフォマティクスなど、DNAの情報を扱う分野は、ITで挑戦したいと思っている人にはいいフィールドだと思います。なぜって、まだこれから市場ができていく分野だから。つまり、まだプロがいないんですよ。だから若い人たちでもどんどん上に行けるチャンスがある。ゲーム業界などIT産業も始めはまさにそんな状況でした。でも今は人も技術も育ってきて業界の権威みたいな人たちも現れてきています。これから若い人だけで挑戦するには結構厳しいと思います。そういう意味でアメリエフのような会社は挑戦しがいのある場所だと思います。

山口 2011年に、オンライン・ゲーム『Foldit』で、科学者たちが10年間にわたって解けなかったタンパク質の構造を、ゲーマーが3週間ほどで解いたというのがニュースになりましたが、ゲームやIT業界で活躍していた人に、ぜひこの分野にも参戦してもらって「もっと効率よく新薬候補を探すにはどんなシステムが必要か?!」といった議論をアツくしていきたいです。

 システムエンジニアの人とやりたいことはたくさんありますね。新しい技術を持ったメンバーが来ることを、スタッフもとても楽しみにしています。エンジニアの血が入ることでアメリエフがこれまでは実現できなかったモノ作りに挑戦できるようになると期待しています。

山口 実は、これまでは別の会社のエンジニアに来てもらっていました。彼らは週の半分くらい常駐していましたが、どうしても「お客様」になってしまう。それでは何も生まれなかったんですよね。化学反応は、密なコミュニケーションの中でしか生まれないと思っています。チームの中に入り込んでディスカッションすることで、新たな発想、アイデアが生まれるのだろうと思っています。同じ船に乗って戦ってくれる、そんな仲間を待っています。

Presented by アメリエフ株式会社

興味を持ったら、一歩踏み出そう 直接話ができる、イベント情報

  • 日時:2015年9月26日(土)午後
  • 場所:アメリエフ本社 (東京都千代田区内神田)周辺
  • 概要:ライフサイエンス×IT勉強会 第2弾
  • 対象:ライフサイエンスとITに興味のある人

申込み方法:サイトの申込フォームよりお申し込みください。http://amelieff.jp/

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写真中:代表取締役社長 CEO山口 昌雄 さん プロフィール
大学では生化学を専攻し、バイオインフォマティクス業界へ。趣味は読書とドライブ。解析システムの構築を得意とする。2000年 理化学研究所 遺伝子多型研究センター 入所、その後2004年 2004年〜2006年 パリ第6大学 留学。創薬ベンチャー企業を経て、2009年アメリエフ設立。

写真左:取締役 CSO 須田 仁之 さん プロフィール
早稲田大学商学部卒業後、ソフトバンクグループの子会社ブロードメディア社のIPO、YahooBB事業立上げに参画。その後、株式会社アエリアなどIT系企業のIPOを複数経験、現在は複数のベンチャー企業の役員・アドバイザー・アクセラレータを担う中、2015年にアメリエフの取締役CSOに就任。

写真右:取締役 COO 金 景順 さん プロフィール
大腸菌必須遺伝子群(大腸菌の生存に最低限必須な遺伝子セット)の研究をしている先生にあこがれて、首都大学東京大学院で分子遺伝学を学ぶ。卒業後、遺伝子関連の仕事を探している際に、個人事業時代のアメリエフに出会い、入社。2015年に取締役COOに就任。