染色体解析のトップランナー、躍進の秘訣語る 株式会社chromocenter
近年、iPS細胞作製を行う機関は増加を続けており、国内では90機関を超えるという(2015年3月時点、iPSアカデミアジャパン発表)。
この状況下で、70機関以上からiPS細胞やES細胞の染色体解析の依頼を受け、数多くの細胞の品質検査を手がけているのが株式会社chromocenterだ。
染色体工学を武器に研究開発を続けるこの鳥取発のバイオベンチャーの人気の秘密を探るべく、神戸ポートアイランドに所在する同社の神戸研究所で研究員の方々に話を伺った。
ニーズが高まる訳
理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーがiPS細胞を用いた臨床研究第1号となる移植手術を成功させたのは2014年9月(本記事の出る約1年前)。
今後、臨床研究を目指した幹細胞実験の件数、プレーヤーはますます増加すると見込まれる。その際に重要視されるのは移植に用いる細胞の安全性であり、その安全性を評価する尺度の1つが「ゲノム不安定性」だ。
また、臨床への応用研究に限らず、基礎研究分野の投稿論文中でも核型解析の結果を示し、ゲノム不安定性がないことを示すケースが増えているという。
すなわち、基礎研究の研究者と臨床開発を目指す企業の双方において、自分たちが使っている幹細胞のゲノム不安定性の有無を検査する重要性が高まっている、というのが同社の見立てだ。
染色体解析の道場
chromocenterでは、キナクリン・ヘキスト染色による簡易核型解析(Q-band解析)、ギムザ染色によるG-band解析、マルチカラーFISH法による染色体異常解析を受託している。
実験をしたことがある読者ならわかるかもしれないが、細胞の固定・染色での微妙な手技、スライドガラスに染色体をきれいに展開させる手技、そして撮影した画像を見分ける感覚など、複合的なノウハウが必要な実験だ。細胞種による違いもさまざまだという。
「日々、さまざまな研究を背景としたサンプルが持ち込まれています。集積によって、単体のラボでは積み上げられないノウハウを私たちは持っています。お客さんの本来の解析意図を推察し、先回りして解析レポートのアイデアを出すこともあります」(同社米子研究所、多田氏)。
日本で一番、染色体解析をしているラボは同社なのかもしれない。全研究員がストイックに技術習得に邁進する様子は、道場さながらである。
遺伝子導入のブレイクスルーを目指して
ここまで染色体解析のノウハウを積むことができた背景には、同社が染色体工学のパイオニアである、鳥取大学の押村光雄教授と開発した人工染色体ベクター技術をもとに創業したこともあげられる。
人工染色体ベクターという、複数遺伝子を搭載可能で、発現調節にも優れるというベクターを活用し、高機能な抗体産生細胞の育種や、遺伝子治療技術の開発を目指している。
受託サービスとして提供している染色体解析は、自社技術の開発の中間産物とも言えよう。
細胞のゲノム安定性を検査したい研究者や、遺伝子導入技術のブレイクスルーが欲しい研究者は、同社に相談してみるといいだろう。