先生の新たなチャレンジを支援し、ものづくり教育を活性化したい 株式会社アバロンテクノロジーズ

先生の新たなチャレンジを支援し、ものづくり教育を活性化したい 株式会社アバロンテクノロジーズ

株式会社アバロンテクノロジーズ
鈴木 昌博さん 代表取締役

数年前まで、石油の精製関連のエンジニアだった鈴木さん。「日本の製造業の現場では革新が起きていない。ここ10年で、中国、欧米に置いていかれた」。このような危機感をつのらせた鈴木さんは今、教育現場にむけて、新たなものづくり教育を提案している。

ものづくりの経験を子どもへ

 自身が若手の頃は、ソニーに代表されるような日本のものづくり企業が世界を牽引していたが、やがてアメリカ、ヨーロッパ、そして中国に遅れをとっていく。エンジニアの立場で、それを肌で感じた鈴木さんは、「このままではいけない」と一念発起し、ものづくりの現場を離れ、起業をした。

 鈴木さんが注目したのが次世代の教育。従来の教育現場では、子どもが自分の作りたいものを想像し、それにあわせて白紙の状態から設計図を描きあげ、それを試行錯誤しながら形にするという、まさに「ものづくり」の経験が圧倒的に少ないと感じていた。そのような教育現場に対して鈴木さんは、3Dプリンタが有効なのではと考えた。3Dプリンタとは、自分で思い描いた立体物を自由に作り出せる機器で、近年、ものづくりの現場に急速に広まっている。3Dプリンタで自分の好きなものを作るには、作りたいものの立体像を、見えない部分も含めてよく考える必要がある。この訓練が将来、自分で新たなものを作ろうとしたときにとても役に立つという。

子どもたちが3Dプリンティングに挑戦するハードルを下げる

 3Dプリンタで立体物を印刷するためには、専用の設計データを作る必要があるが、設計するためのソフトは、英語表記のものが多く教育現場で使えるものがなかった。そのため鈴木さんは、日本の教育現場向けに、新たなソフトを独自で開発した。教育現場での活用を見据え、工夫した点は2つだ。まず、ゲームの要素を取り入れたこと。ソフトにはあらかじめクイズが用意されていて、球や三角錐などシンプルな形から始まり、徐々に鳥やロボットなど複雑な形のモデリングに挑戦できるようになっている。さらに、設計結果に対して点数化もされ、ゲーム感覚で取り組める。これにより、小学生でもかなり集中して取り組むことができる。2つめは、空間認知に欠かせない座標の概念を取り入れたこと。作りたいものの絵をPC上で描くのではなく、あえて座標の数値の入力をさせることで、数値が表す三次元物体をイメージするトレーニングになる。

新しい技術を教育現場に届ける

 世界中で学校への3Dプリンタの導入が進んできている。日本でもごく近い将来そうなってくるだろう。新しい技術が導入されるときには、立派な機器はそろえたけれど、うまく使いこなせない、という状況が容易に思い浮かぶ。しかし、より使いやすいソフトがあることによって、学校現場で3Dプリンティング技術をもっと気軽に扱えるようになるはずだ。いずれはモデリングソフトだけでなく、ITの力を活用して教育現場に革新を起こしたいという鈴木さん。鈴木さんが開発したソフトによって、新しい技術を教育に取り入れる時のハードルが下がれば、かならず教育現場が変わると鈴木さんは考えている。日本のものづくりの復興は、こうした教育活動が積み重なった先にしか、実現できないだろう。

記者のコメント

パソコンで設計した立体物が、3Dプリンタの中でどんどんできあがっていく様は、まるで魔法のようです。近い将来、家庭にも普及するかもしれないといわれている3Dプリンタ、ぜひたくさんの先生方に、一度は体験していただきたいと思います。