静岡聖光学院中学校・高等学校と共に「学校の掲げる教育理念や目標」と「生徒の特徴」の相関性について調査を実施

静岡聖光学院中学校・高等学校と共に「学校の掲げる教育理念や目標」と「生徒の特徴」の相関性について調査を実施

株式会社リバネス(代表取締役副社長CTO:井上浄)の教育総合研究センター(センター長:前田里美)では、2019年度、社会心理学者の正木郁太郎氏(東京大学研究員)、静岡聖光学院中学校・高等学校と共に、同校における教育理念と育成方針の相関性に関する調査を行いました。調査の結果、同校の教育理念と生徒の特徴との間に、十分な相関性があることが示唆されました。今後、リバネス教育総合研究センターでは、本研究結果を踏まえて、生徒の主体的行動をはじめとする行動の変化を促す教育プログラム開発を進めて参ります。

昨今、特に私学を始め多くの学校が、教育指導要領に基づく知識・技能の習得だけでなく、学校の教育理念を体現するための教育方針や目標を掲げ、それに基づいて学校独自の取り組みやイベント、教職員への研修などを行なっています。

本研究を行なった静岡聖光学院中学校・高等学校では、「地の塩・世の光の担い手となる」をディプロマポリシーに掲げ、6年間の一貫した教育カリキュラムの中で、飽くなき向上心と探究心を身につけ、強い信念と責任を持って、キリスト教(カトリック世界観)に基づいた社会に貢献できる利他的精神を持った人材を育成することを目標に掲げています。

そこで、本研究では、学校の掲げる教育理念や目標と、生徒の特徴の相関性について調査を行いました。調査の始めに、日頃学校で実行されてる先生方の生徒への接し方、学校の環境づくりなど、同学の中で、考えうるさまざまな因子とその想定する効果について、先生方とディスカッションを重ねました。図1のような人間関係、授業と学習、学校環境の特徴、そして育てたい生徒の特徴などを洗い出し、「主体性、自己肯定感、物事に対する関心とワクワクが周囲を巻き込む行動を促し、その結果、利他的な人材の育成に繋がる」という仮説を立てました(図1)。

図1 先生方とのディスカッションから生まれた調査の仮説

 

調査手法としてオンラインによるアンケート調査を行いました。自己肯定感や物事への関心の強さなどの項目の平均値を分析し、相互の関係を分析することと、部活動への参加や、学生寮への入居など、学校生活の特徴と生徒の意識・価値観への関係を分析しました。アンケートへは、2019年度の全校生徒、中学1年生から高校3年生までの合計374名が回答をしました。

 

【調査結果】
調査の結果、「主体性、自己肯定感、物事に対する関心とワクワクが周囲を巻き込む行動を促し、その結果、利他的な人材の育成に繋がる」という仮説の全体像の中で、それぞれの前後関係に有意な相関が認められました。

また、自己肯定感が、周囲を巻き込む行動との関係があり、主体的な行動の頻度が高まる結果として、聖光生としての自分を意識する機会や、学校生活の充実を指す学校へのエンゲージメントも高まっていました(図2)

図2 統計分析結果。数値および*** 、** は矢印で繋がれている項目間の関連性を表す。全ての項目間での関連性は統計的に優位であった。**p<.01, ***p<.001を示す。

 

これらの結果から、自己肯定感が高まることにより、学校の教育理念の浸透である利他的な人材が育成され、学校へのエンゲージメントも高まることが示唆されました。また、生徒の自己肯定感を高めるには、さまざまな学校の取り組みの中でも、特に

①失敗を受け容れて挑戦を促せる対人関係
②生徒が主体的に学校・教育活動に参加して自ら変えていける環境 が重要であること

が示唆されました。

さらに、学校生活の影響に関する詳細の分析結果から、生徒の自主性や主体性を促しつつ部活動に参加することが自己肯定感やエンゲージメントをより高める傾向があることが示唆されました。

今後、リバネス教育総合研究センターでは、この結果を踏まえて、学校の環境や先生方の教育方針と育てられる人材の特徴との関係性や、今回特に重要だと示された自己肯定感とワクワクの関連性、そしてそれらを高める働きかけについてさらに研究することで、生徒の主体的行動をはじめとする行動の変化を促す教育プログラム開発を進めて参ります。

 

静岡聖光学院中学校・高等学校 http://www.s-seiko.ed.jp/
静岡県静岡市駿河区小鹿にある私立男子中学校・高等学校(中高一貫校)。神奈川県横浜市中区にある聖光学院中学校・高等学校、東京都世田谷区にあるセント・メリーズ・インターナショナル・スクールは姉妹校である。「地の塩・世の光の担い手となる」をディプロマポリシーに掲げ、6年間の一貫した教育カリキュラムの中で、飽くなき向上心と探究心を身につけ、強い信念と責任を持って社会に貢献できる人材を育成している。

 

正木郁太郎氏
東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程修了。博士(社会心理学)。2019年まで、東京大学大学総合教育研究センター特任研究員を務めた。2020年3月現在、東京大学大学院人文社会系研究科研究員のほかに、成蹊大学非常勤講師など。また、人や組織を対象とした研究で個人事業主としても活動し、企業のアドバイザーなどを複数兼務している。企業や学校の「現場」の問題関心と学術研究の橋渡しとなることを目指している。

 

本件に関するお問合せ:
株式会社リバネス 教育総合研究センター 担当:立花、前田
電話:03-5227-4198   メール:[email protected]