【実施報告】九州から世界へ挑むディープテック・エコシステムとは Fukuoka Innovation Lab. Tenjinオープニングイベントに丸幸弘が登壇

2026年9月1日、福岡市・天神の「Fukuoka Innovation Lab. Tenjin」オープニングイベントに、株式会社リバネス 代表取締役グループCEOの丸幸弘が登壇しました。
パネルセッション「大学発ディープテックで世界へ挑む」では、熊本大学発ベンチャーである株式会社CAST 代表取締役の中妻啓氏、モデレーターのHERO Impact Capital Founder & General Partner 渡邊拓氏とともに、九州からディープテックスタートアップを生み出し、世界へ展開していくための地域の可能性について議論しました。
セッション概要
本セッションでは、「なぜ今、九州でディープテックなのか?」、「九州で、ディープテックスタートアップが突き抜けるために必要なものは?」という2つの問いを軸に議論しました。
2016年に熊本で開始したテックプランターの取り組みや、熊本大学発ベンチャーである株式会社CASTの創業・事業化の経験を振り返りながら、九州が持つものづくり産業の集積やアジアへの近さ、大学に蓄積された研究成果といった地域の強みを整理しました。
さらに、九州からディープテックスタートアップが大きく成長していくために、大学の「知」を産業へつなぐ人材、挑戦する研究者・起業家を増やす環境、地域企業との連携、そして多様な挑戦を同時多発的に生み出すアントレプレナーシップの重要性について意見を交わしました。
ディープテックは最初から世界を目指せ
九州におけるリバネスの取り組みの原点の一つが、2016年の熊本地震を契機に始まった熊本テックプランターです。
当時、地方の大学や研究機関には世界で勝負できる技術や知識がありながら、それらを研究室の外へ出し、産業につなげる仕組みは十分ではありませんでした。
一方、九州には自動車や半導体をはじめとする製造業と、それを支える中堅・中小企業のサプライチェーンが存在します。中妻氏も、CASTの事業化を進める中で、地域企業が持つ製造現場の知識や生産・開発の力が大きな支えになったと振り返りました。
さらに、九州から上場したディープテックスタートアップは、2022年以降で3社(株式会社サイフューズ、株式会社QPS研究所、PicoCELA株式会社)が生まれています。こうした事例が出始めた今こそ、九州でディープテックを一気に加速させるタイミングだと語りました。
ディープテックとは、社会的もしくは環境的な地球規模の課題に着目し、その解決のあり方を変えるものであると考えています。そのため、ディープテックの事業づくりでは、市場ありきではなく、「何の課題を解決したいのか」から考えることが重要です。
その例として紹介したのが、株式会社ユーグレナ創業時の取り組みです。国内の特定市場を狙うことから始まったのではなく、「栄養失調という言葉をなくしたい」という課題意識が研究と事業の出発点でした。
「世界の課題を解決するのが研究であれば、世界へ行くのは当たり前」。課題を起点にすれば、ディープテックに国境はなく、地域で生まれた技術も世界へ直接つながります。
その点で、九州は韓国や台湾に近く、東南アジアへの接続性も高い地域です。特に福岡は、国内外の人や情報が集まり、アジアへ展開する拠点となり得ます。ものづくりの基盤と海外への地理的な近さを併せ持つことも、九州から世界を目指す強みです。
大学の知を、地域の産業につなぐ
セッション後半では、地域から継続的にディープテックスタートアップを生み出し、その中から大きく成長する企業を生むために必要なポイントについて議論しました。
その基盤として挙げられたのが「大学」です。大学に研究者が集まり、新しい知識が生まれ続けることがディープテック創出の源泉になります。さらに、その基盤を長期的につくるためには、中高生の段階から研究に挑戦する機会を設け、次世代の研究者を育てることまでを一つの流れとして考える必要があります。
一方、研究成果が存在するだけでは、新しい産業は生まれません。
研究者のもとへ足を運び、「これは面白い。一緒にやろう」と声をかけ、大学の研究成果と企業が持つ課題、技術、設備、ネットワークを結び付ける「ブリッジする人」の存在が必要です。研究者と企業、異なる知識を持つ人同士をつなぐ人材が地域に増えることで、大学の「知」が新たな事業へと動き始めます。
中妻氏からは、地域に起業する仲間そのものを増やすことの重要性が語られました。
一社だけが注目されるのではなく、研究者に「起業する」という選択肢があることを伝え、「自分もやってみよう」と考える人を増やしていく。さらに、起業がうまくいかなかった場合にも大学へ戻ったり、そこで得た経験を次の仕事に生かしたりできる環境があれば、挑戦へのハードルを下げることができます。
ディープテックスタートアップを増やすには、成功する人だけを選ぶのではなく、まず挑戦する人の母数を増やすことが重要です。
挑戦の母数が突き抜ける存在を生み、エコシステムへ
セッションの最後には、ディープテックの成長を「確率論」で捉える考え方が示されました。
最初から成功が見えている技術だけに集中しても、新しい産業は生まれません。当初は注目されていなかった技術や、社会とのつながりが見えにくかった研究が、後に大きく成長することもあります。
一つの技術や一社だけに投資し、確実な成功を求めるのではなく、多様な研究者や起業家が同時多発的に挑戦する。その中から「突き抜ける」存在が生まれる確率を高めていくことが、地域のエコシステムには求められます。
その土台となるのがアントレプレナーシップ教育です。異なる考えを持つ人と出会い、自分の考えを表現し、互いの知識をつなぐ力を、小中高から大学、研究者まで連続して育てていく。「どこが抜けてもだめ」という視点で、九州全体に挑戦する文化をつくる必要性が語られました。
「『九州ディープテックって面白い』と思って人が集まるようになれば成功」。
熊本から始まった取り組み、大学に蓄積された知、地域企業のものづくりの力、そしてアジアへの近さ。九州には、世界の課題に向かう技術を育てる条件がそろい始めています。次に必要なのは、その可能性に人が集まり、挑戦が同時多発的に生まれる場を広げていくことだというという議論をもって、セッションは締めくくられました。

会場の様子
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「研究」「社会実装」の新しい一歩を踏み出してみませんか
九州テックプランターでは、エントリー後、リバネスのコミュニケーターとの面談を通じて、研究成果の社会実装に向けたビジョンやプランを一緒に言語化していきます。その先には、共同研究、外部資金の獲得、パートナー企業との連携、実証フィールドの探索、プロトタイプ開発、法人化など、さまざまな選択肢があります。
ぜひ多くの研究者、研究開発型ベンチャー企業のエントリーをお待ちしております。
エントリー締切:2026年9月25日(金)
【お問合せ】
株式会社リバネス 地域開発事業部
担当:福田、戸上、重永
TEL:03-5227-4198(代表) E-mail:[email protected]
