テクノロジーと ビジネスが結びつく瞬間

テクノロジーと ビジネスが結びつく瞬間

日本環境設計株式会社 代表取締役社長 岩元 美智彦さん

日本環境設計株式会社は繊維製品リサイクル事業において独自の技術とビジネスをつくり上げた。社長の岩元さんは、研究者がビジネスモデルを理解することで新しい事業を起こせると語る。

技術の空白地帯

化石燃料への依存が大きい日本で新エネルギー開発は悲願の1つだ。生物由来の資源を原料とするバイオエタノールは持続可能なエネルギーとして注目が集まっている。しかし、とうもろこしやサトウキビなどの農作物を原料とすることは食糧不足が問題となる世論の中では現実的でない。そんな中、日本環境設計は衣料品からバイオエタノールをつくる事業で大きな注目を浴びたのだ。「使い古したユニホームのリサイクルをもっと効率的にできないかというニーズがありました」。創業者の岩元さんはもともと化学繊維メーカーの営業出身で、制服素材の販売を担当していた。仕事を通して、日本では年間200万トン以上の繊維製品がリサイクルされずに廃棄されていることを知った。「繊維製品をリサイクルする技術がなかったし、リサイクルしたものを販売するビジネスモデルもなかったんです」。

際立つ研究成果とビジネスモデル

そこで岩元さんは大学院で化学工学の研究をしていた髙尾正樹さん(現専務取締役)に研究開発を依頼した。綿繊維は90%以上をセルロースが占めていることから、バイオエタノールとしては有望だ。しかし、繊維製品、特に衣料品等には化学繊維などが混ざった複合繊維が多いことなどから原料にするには不向きとされていた。髙尾さんは大阪大学との共同研究で新たな酵素を開発、複合繊維の中にあるセルロースを特異的に分解できるようになり、バイオエタノールをつくることが可能になったのだ。技術面で好感触を得たことを追い風に、岩元さんはビジネスモデル構築に奔走した。バイオエタノール製造を安定したビジネスにするには、常に一定量の衣料品が手に入ることが欠かせない。そこで、大量の衣服を扱うイオンや良品計画、マルイなどへリサイクル活動への参加をとりつけた。この衣料品回収事業を『FUKU–FUKUプロジェクト』としてブランド化し、ブランド使用料をもらうビジネスモデルをつくったのだ。本来なら原材料の仕入れ金を払うところを、これならブランド使用料によって収益をあげることができる。製造したバイオエタノールの販売先も、今治のタオル工場など、常に繊維くずが手に入り、燃料を必要とする場所を提携先として開拓した。

新しさを生む原動力

この繊維製品リサイクルのビジネスモデルを応用して、携帯電話のリサイクル事業にも進出した。プラスチックのリサイクル技術を導入した上で、NTTドコモの協力を取り付けて大規模な回収を行い、携帯電話の外装をリサイクルするビジネスだ。今後新しい技術があれば、別の新しいリサイクル事業を立ち上げることもできるだろう。技術をビジネスモデルに組み込める力があれば新たなチャンスを掴めるのだ。ビジネス化されず眠っている技術は世界中にまだまだある。両者をつなげ、ブレイクスルーさせる人材はこれからますます必要とされるだろう。研究とビジネスがわかる人間は本当に強い。試行錯誤していくことで、あなたにもチャンスがやってくるかもしれない。(文 篠澤 裕介)