インターンシップを活用して 理系人材の能力に磨きをかけよう
氷河期続く、博士の就職
博士とは高度な専門性を備えたその道のプロであるが、相変わらずの就職難が続いているようだ。その理由の1つが、2007年に実施された経団連によるアンケート調査から見えてくる。博士課程修了者は専門性や研究遂行能力、論理的思考能力で高い評価を受けている一方で、コミュニケーション力や協調性、業務遂行能力に課題があると考えている企業が多い。リーダーシップやマネジメント力、分野にとらわれない広い視野…企業は入社後すぐにでも事業の中心的役割を担っていける能力を博士に期待しているのだ。
実際、『就職四季報』2012 年度版によると、掲載企業6000 社のうち、2009~2011年度に博士課程修了予定者を採用する企業は276 社と、たった4.6%にすぎない。ここ3 年間の採用実績をみると、博士課程修了者の採用人数は半減している(グラフ1)。2008年のリーマンショック以降続く不況により、企業の採用活動が鈍くなる中、博士人材が活躍していくためには、どうしたらいいのだろうか。
理系の可能性を広げるインターンシップ
2005年度から2008年度の大学生・大学院生のインターン参加経験者の割合(グラフ2)を見ると、経験者のうち就職活動時期にあたる
学部3 年と修士1年の割合が飛びぬけて高いことがわかる。もともと就業体験としての意味合いが強いこともあり、博士課程以上での参加者は10%未満となっている。インターンシップは学生のうちから研究室から飛び出して自分を試し、研究以外の資質を高められる大きなチャンスとなり得る。その点に注目した文部科学省は、2008年度より「博士版インターンシップ」ともいわれる「ポストドクター・インターンシップ推進事業」をスタートさせ、博士号取得者をはじめとした高度な専門性を備えた人材が企業で活躍できる環境作りに乗り出した。
ポストドクター・インターンシップ推進事業の1つである「イノベーション創出若手研究人材養成」に採択された23の大学では、独自のプログラムを設定し、博士課程学生(場合よっては修士課程の学生も対象となる)やポスドクに対して、各種座学研修とインターンシップへの参加を支援する。条件さえ満たせば、他大学の学生にもその門戸は開かれる。
インターンシップへ行こう
米国では博士課程の学生の多くが在学中に企業や行政機関のインターンに参加し、約4 割のPh.D.がノンアカデミック・キャリアに就くという。インターンシップ参加の経験が、多様なキャリアを開拓するきっかけになっているのではないだろうか。博士課程の学生には専門性や論理的思考力という大きな強みがある。その能力に磨きをかけ、実際に活かせる場所は研究室の外にもたくさんあるのだ。アカデミックキャリアを歩むとしても、一時でも企業に身をおいた経験は、研究に幅を持たせるに違いない。さあ、世界を広げ自分の価値を高めに行こう。(文 瀬野亜希)