世界No.1への挑戦

世界No.1への挑戦

株式会社ディー・エヌ・エー 代表取締役社長 守安功さん

2010年度の売上が前年比134%の1127億円、経常利益は161%増の562億円という数字を叩き出し、同時期の売上高が2000億円程度のfacebookに迫る勢いで拡大を続ける株式会社 ディー・エヌ・エー(以下DeNA)。本年6月、社長交代により新社長に就任したのが、創業間もない頃にシステムエンジニアとして入社し、その他様々なキャリアを経験してDeNAの急成長を牽引してきた守安さんだ。世界戦へと本格的な舵を切った同社の目指す先には、英語圏に留まらないグローバルプラットフォームの構築があった。

いざ、世界戦へ

7月26日、英語圏と中国向けに2つの「Mobage」の本格展開を発表したDeNA。アメリカ、カナダ、イギリス、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリアの英語圏6か国に中国を加えた7か国で、アンドロイド端末用アプリをリリースし、本格的なサービス開始した。「現在、注目されているFacebookやTwitterは、世界中で流行っているように見えるけど、厳密には英語圏で広がっているに過ぎない。サービスには、世界中で同じように受け入れられるものと、地域性がありローカライズされないと受け入れられないものがある。特にユーザーインターフェイスの領域は必ずローカライズが必要だと思います。だからこそ、DeNAは「Mobage」をつくるときに、ユーザーインターフェイスを国内のもの、グローバル版、中国版を統一せず、それぞれのパートナー企業とともに、それぞれの地域性に合った仕様で展開する戦略をとっています。この戦略を進めていくことで、英語圏に留まらない、本当のグローバル展開が可能になると考えています」。

スクラムジェットエンジンからITの世界へ

守安さんの大学時代の研究テーマはスクラムジェットエンジン。マッハ10の速度で、日本とロサンゼルスを1時間半で移動できる夢のような技術について研究していた。超音速の速度領域では、通常の燃焼とは違う意図していない化学反応や物理挙動が起こるため、空気と燃料を混合して噴射する際の最適な方法を、実験とシミュレーションを通じて研究する日々。「研究自体は楽しくて、実験を行う際には朝から23時くらいまでぶっ通しでやっていました。でも、実用化までに30年かかるというスパンの長さが性格的に合わないと思って就職する道を選びました」。同じ専攻の人間の多くが大手重工メーカーなどに就職する中、eBayやアマゾン、ヤフーなどが急速に発展してきたIT業界に興味を持ち、1998年に日本オラクルに就職した。しかし、アメリカ法人の営業支社だった日本オラクルでは、ソフトのソースコードも見られないというくらい情報が制限されている状況だった。意思決定できる裁量の少なさに疑問を感じ、翌年に友人が参加していたスタートアップ間もないDeNAに転職した。当時の社員数はたったの6人。ほぼすべての意思決定を自分ができる環境を手に入れて、モバオク、モバゲータウン(現・Mobage)など次々と大きなサービスを作り上げていった。

サービス思考を持つエンジニアが世界を動かす

「サービスに落とし込めない技術には意味がない。FacebookもTwitterも、そういったサービス思考のエンジニアが作り上げた会社です。今、世界中でエンジニアがサービスを生み出し、そこから新しいビジネスが生まれています。DeNAが求めるのもサービス志向持つエンジニアです。世界を舞台に一旗あげようという気概を持った人に来てほしいと思っています」。エンジニアが実際のサービスを使うユーザーまで具体的にイメージして、どんなものがユーザーに好まれるのか、どんなものが競合で流行っているのかまで視野に入れてることで、短期間で質の良いサービスを作ることができるのだ。今のDeNAならシリコンバレーになれる「シリコンバレーの強みは、1つのアイデアに大きな資金が投入されること、そして人材の流動性が高いことです。日本の場合、この2つの面でシリコンバレーに確実に遅れをとってしまっています。しかし、今のDeNAならば、優秀なエンジニアたちがたくさんのアイデアの種をまき、資金と人材を投入して一気にサービスを拡大することができる。つまり、シリコンバレーの仕組みをDeNAの中で再現できると思っています。」ソーシャルゲームは、無料でゲームが楽しめるという点で世界中のユーザーに高い訴求力を持つ。リアルコミュニティであるFacebookなどに比べて、ヴァーチャル空間のユーザーあたりの売り上げは極めて高いという特徴を持つ。ソーシャルゲームという業界において、シリコンバレーの企業たちを相手に、世界No.1企業を目指すDeNAの挑戦から目が離せない。(文 長谷川和宏)