就職世界戦に備えろ!

就職世界戦に備えろ!

日本学生支援機構が発表したデータによると、日本に在住する外国人留学生の数は、今年、1983年の調査以来、通年で最多の141,774人に達する。中でも、専門知識を身につけるため日本の大学院に進学している留学生数が著しい増加傾向にあり、昨年と比べると約4,000人も増加している。また、株式会社ディスコが行った調査によると、留学生の約40%は日本での就職を希望している。研究においても、就職においても、彼らは日本人学生の良き戦友であり、強力なライバルとなりつつある。本特集では、そんな外国人留学生の活躍と日本が迎える就職世界戦に迫る。



国境を越えて、夢を叶える

「○○を勉強したい!」「△△研究室で研究をしたい!」大学院進学の際に、誰しも自分が求めるスキルや経験を積むため、また自分が思い描くキャリアにつながるステップを踏むために最適な場所はどこか考えるだろう。当然のことながら、その場所が日本にあるとは限らない。また、研究を続けるうえで、論文を国際カンファレンスで発表したり、海外の研究者と情報交換をしたりと、国境を越えて活動をする場面は多々ある。日本人学生が自分の理想に最適な学びの環境を求めて海外に留学するのと同様に、海外の学生もまた、自分の成長の場所を求めて日本へやって来るのだ。2010年度に日本の大学に在籍する留学生を出身国別で見ると、中国(61%)、韓国(14%)、台湾(4%)が上位を占めている。

国を上げて国際化を進める

留学生が増加している背景には、日本政府の後押しが影響している。日本学術振興会は、日本をより世界に開かれた国にする戦略の1つとして「2020年までに留学生の受け入れ30 万人を目指す」という目標を掲げている。全国の大学キャンパスに助成金を配布し、英語で行う授業を充実させたり、留学の推進、留学生の受け入れ態勢を強化するなどの取り組みを支援している。こういった取り組みは国内にいる日本人学生にとっても国際的な環境で学習する場を提供することにつながっているのだ。

留学生の国内就職状況

このように、日本で学位を取得する留学生の数が増え、彼らを受け入れる体制が少しずつ整っている一方で、卒業後のキャリアの舞台となる日本企業での留学生の受け入れ態勢はどうだろう。株式会社ディスコが全国の主要企業13,421社を対象に行った調査では、21.7%の企業が2011年度に外国人留学生を採用したと回答しており、その数は昨年度と比べるとほぼ2倍に増加した。中でも海外拠点を持つ企業は36.1%が採用を行っている。留学生を採用する理由として、「優秀な人材を確保するため(約70%)」「海外の取引先に関する業務を行うため(約40%)」や、「外国人としての感性・国際感覚等の強みを発揮してもらうため(約35%)」が挙げられている。また、経済産業省が行う海外事業活動基本調査によると、日本企業が海外に進出していく動きが活発になっていることが伺える。海外で現地の法律に基づいて設立した現地法人の企業数は2001年の12,476社から年々増加し、2009年には5,725社増の18,201社となっている。そして、現地法人を新たに設立するか資本参加等により海外事業体制を拡充したい、と考えている企業も、対中国では33.9%、タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピンを合わせたASEAN4で19.1%になるなど、日本企業の海外、特にアジアへの進出はこれからも増えていくと言えそうだ。そんな時流の中で現地の文化や風土を理解する留学生は貴重な戦力なのだ。 今後、日本企業がますます国際化していくのは間違いない。世界中から集まった優秀な人材が、就職戦線に並び立つことになるだろう。彼らと競い合い、また企業に入った後にパートナーとして働いていくためには、日本人がより国際化していく必要がある。国内に増えつつある留学生をライバルとして意識し、彼らから直接刺激を受けて学んでいくことこそ、今の日本人学生に必要な姿勢なのだ。(文 前田里美)

平成22年度外国人留学生在籍状況調査について独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)/採用活動に関する企業調査 株式会社ディスコ(2010 年8月)