大きな「耳」を持つ シログチの成長日記

大きな「耳」を持つ シログチの成長日記
シログチの耳石

シログチの耳石

白銀色にきらきら輝くうろこをからだにまとい、えらのフタ部分に黒いまだら模様を持つシログチ。
頭蓋骨の近くには、左右一対の貝がらのようなかたちをした「耳石」と呼ばれるかたまりがあります。
その姿がまるで石を抱えているように見えることから、「イシモチ」とも呼ばれています。
耳石は、魚が泳ぐときの平衡感覚を保つと同時に聴覚の役目を果たしており、私たち人間でいえば、「耳」に相当します。
その大きさは直径1cmと、通常の魚の約10倍もあります。
この大きな耳石は、シログチが属するスズキ目ニベ科の魚類が持つ特徴でもあるのです。
実はこの耳石から、魚の成長を知ることができます。
顕微鏡で観察すると、幅の広い透明な帯と幅の狭い不透明な帯が交互に円を描いているのが見えます。
耳石は炭酸カルシウムの透明な結晶でできていますが、有機物も蓄積し、それは不透明な層を形成します。
これは一日の周期でくり返されていくため、不透明な帯と透明な帯の組み合わせは、彼らの成長日記ともいえるでしょう。
それを読むことは、いつ生まれ、どんな生活をしてきたかを知る手がかりになります。

水深20~140mの大陸棚を中心に、世界中に広く分布するシログチは、季節が変わるごとに生息場所を移し、5~8月にかけて産卵をすることが知られています。
中国と日本に挟まれた東シナ海領域で成長したシログチは底びき網でとらえられ、日本では主にかまぼこの原料として使われます。
世界中に約30、000種いるともいわれている魚類の中で、かまぼこの原料として優れているものはわずかしかいません。
その中でも、シログチはかまぼこの命であるしなやかで力強い弾力をつくり出すのに、とても適した筋肉を持っているのです。
今年も黒潮などの暖流に乗って大陸棚を移動するシログチ。
海釣りや魚屋さんで彼らと出会ったら、大きな耳石に刻まれた成長のしるしを見つけてみましょう。

シログチ

シログチ

  • スズキ目ニベ科シログチ属
  • 学名 Pennahia argentata
  • 英名 White croaker