眠れる資源で地域の活性化を目指す!

株式会社クレイ沖縄専務渡嘉敷哲さん

株式会社クレイ沖縄は、未利用で眠っている沖縄の有用資源に着目、大学や企業と共同研究を推進し、創意工夫と熱意をもって、研究から販売まで健康食品に関わる事業を展開している。
この度設立する「クレイ沖縄賞」は、沖縄のみならず各地に眠る未利用で有用な機能性食品素材の探索やその評価などが対象だ。

新たな有用資源を発掘する

渡嘉敷哲さん

クレイ沖縄が取り扱うサプリメントに「ぐっすりん」という商品がある。市場ではまだあまり知られていない健康食品だ。この原料に使われている「クヮンソウ」は沖縄の伝統野菜の1つで、「ニーブイ草」とも呼ばれる。

「ニーブイ=眠い」を意味する通り、古来より睡眠・鎮静の作用があると言い伝えられてきた。渡嘉敷さんは、これに早くから着目し、科学的根拠に基づいた効能の実証を行うため、同志社女子大学薬学部、琉球大学農学部らと共同研究を行った。その結果、有効成分として遊離アミノ酸の一種である「オキシピナタニン」を同定し、さらにその有効成分を大量に安定的に抽出する技術の開発にも成功し、「ぐっすりん」が誕生した。食文化・伝承に由来する地域特有の資源の機能性について、見事に産学官が連携した研究開発の良い例といえる。クヮンソウ研究が生み出した成果は、沖縄の伝統野菜にさらなる付加価値を与えた。農家、製造会社や販売会社だけではなく、艶やかなオレンジ色の花を咲かせるクヮンソウを楽しむ観光ツアーも新たな収入源になるだろう。

加工副産物を活用する

これ以外にも、未利用な加工副産 物の有効活用に力を入れている。沖縄を代表する泡盛の製造時に排出される泡盛蒸留粕は年間約億千トン(沖縄県酒造組合連合会2011年報告)。そのうち約割はもろみ酢として再利用される。沖縄もろみ酢は、天然のアミノ酸やクエン酸を豊富に含み、健康促進に効果をもたらすとされる。数年前に到来した「もろみ酢ブーム」をきっかけに、一気に日本全国へ広まった。しかし、現在その消費は全体的に低迷している。原因の1つとして挙げられるのは、独特の風味だ。渡嘉敷さんは、この特徴的な味やにおいの原因物質を取り除き、もろみ酢の改良を目指している。さらに、廃棄処分になる残りの圧搾粕も余すことなく再利用するための技術開発も行っている。多くの酒造場が抱える深刻な課題に、一筋の光が差し込む日は近い。

「地元愛」で育む地域の財産

今回の研究費設立には、まさに地域に眠る資源を発掘し新しい産業を生み出したいという思いが込められている。「地元に密着した地方の大学や高専のほうが、こうしたシーズを持っている可能性が高いと考えています」と、渡嘉敷さんは話す。機能性食品の開発ヒントはあらゆるところにある。例えば、おばあちゃんの知恵袋のように昔から効能が謳われているが科学的根拠の乏しい食べ物や、食品工場から出る廃棄物がそうだ。それだけではない。大学や研究機関で今研究対象としている生物や物質が、食品素材として利用できないか。もしくは、まだ試していないがその可能性を秘めているものはないか、ぜひ考えてみてほしい。渡嘉敷さんらクレイ沖縄はそうしたシーズを一緒に見つけ出し、関連する生産者、製造会社や販売会社全てを巻き込んで、産業化していきたいと考えている。そんな熱い思いを持った人たちと一緒に、科学技術で 「地元」を盛り上げてみないか。