コテコテの大阪の会社が グローバル化に挑む

コテコテの大阪の会社が グローバル化に挑む

武田薬品工業株式会社 総務人事センター 湯浅尚樹さん

「グローバル化」に向けて大きく舵を切った武田薬品工業株式会社の採用活動。海外人材は特別に採用プロセスのスピードアップを図るなど、大胆な変化が起きている。なぜ、こうした変化に踏み切ったのか、どんな人材が求められているのか。採用グループの湯浅さんに聞いた。

海外採用での大胆な試み

「海外の人材は積極的に採用しようと考えています。第1優先は中国です。中国のトップ学生は550万人のトップ。選抜の厳しさが段違いです」。と湯浅さんは話す。今年は本社採用のために、現地での面接を実施した。面接で出会った学生は、外国に行ったことがなくても流暢な日本語、英語を話し、日本人学生にないハングリーさを持っていた。会社説明会、書類選考、面接を1日で終え、最終面接のみ日本で実施するハイペース。日本とは違う。

世界をリードするための体制に

なぜここまで積極的な採用を行うのだろうか。湯浅さんは「日本発の製薬企業の本社人材に求められる役割が変わった」と説明する。その1つとして、研究開発のあり方が変わったことが挙げられる。自社の研究機関だけで医薬品開発に関わるすべての工程を完了させる必要がなくなった。世界中の技術を視野に入れ、技術Aは自社、技術Bは別の場所から持ってくる。本社の研究開発には、そうしたコーディネート機能が必要となってきているのだ。また、世界中の支社をマネジメントする役目がますます重要になった。本社が特許、原材料、資金など製薬企業の経営を左右する様々な情報を整理し、管理することが求められているという。こうした傾向を捉え、いち早くグローバル化に向けて変化したのは研究開発部門だ。シカゴに本拠地を移し、トップは外国人、社内レポートは英語となった。アメリカ市場の情報収集に強みを持ち、プロジェクトの中止など重要な決定も行う。日本中心の見方をやめるための大胆な変更だ。

日本の本社から世界をリードする

内部体制の変化に合わせ、採用する人材もグローバル化に対応できる人間でなければならない。例えば海外留学した日本人学生への注目度が高まっている。学生のうちに海外生活に挑んで、言葉が通じないなどの挫折を経験したことがあることが貴重だという。また、共同研究や遊びで留学生を知っていることもプラスになると考えている。湯浅さんは「激しい技術競争、既知のテクノロジーで第一人者であり続ける期間は短くなっています。日本の理系人材に求められる役割は、1つのテクノロジーを追い求めることではありません。日本に本社を置く会社として、2タイプの人材を求めています。1つはこれから会社を引っ張っていけるような、経営が分かる人。または広い視野を持って、技術を結びつけることで新しいテクノロジーを生み出せる人です」と話す。あなたはどちらを志向するだろうか。新しいキャリアパスに向けて、あなたの挑戦が求められている。(文 篠澤 裕介)