『健康』を届ける、新はなまるスピリット
株式会社はなまる 素材開発部 長野裕一さん
外食が続いた時には、どうしても健康に良くないのでは、と考えてしまいがち。栄養が偏ったり、知らない間にカロリーを摂り過ぎたりと、家庭料理よりもどうしても不健康なイメージが付きまとってしまう。そんな外食に対するイメージを払しょくしたいと、「はなまるうどん」で有名な株式会社はなまるは、『健康』に配慮した新しい外食企業へ生まれ変わることを決意した。その第一歩となるのが、食の未来を考える研究者への支援活動。健康をテーマにリバネス研究費「はなまる賞」を設置した。
素材開発部が差別化の切り札
「最近の外食産業では、新サービスを提供しても、同業他社に簡単に真似されてしまう。価格を下げていくこと以外で他社との差別化が図りにくくなってきているのです」。そう話すのは素材開発部の長野裕一さん。なぜ、外食チェーンを展開するはなまるが、健康というテーマで研究費を募集するのか。理由はそこにあった。他社が簡単には真似できない「科学」をベースにして、コンセプトを打ち出したい。そこで「健康な素材」の開発・研究というこれまでに社内ではなかった角度からの勝負に出ることにしたのだ。長野さんの所属する素材開発部は、昨年11月に発足されたばかりの新しい部署。現在2名で奮闘中だ。
まずは既存のメニューの「カロリーオフ」に注目し、はなまるの定番商品である「かき揚げ」のカロリーをもっと少なくできないかと研究を始めた。既存の商品でカロリーオフを図ることで「はなまるうどん=健康な食事」というイメージを少しずつ浸透させていくつもりだ。未開拓の境地を切り開く「かき揚げでは成功したカロリーカットの方法が、他のてんぷらでは成功しなかったりします。揚げものの機構1つとっても、不思議なことばかりでした」。長野さん自身、健康なメニューづくりを起点に科学的な検証を始めたことで、素材そのものを追求していきたいという欲求が高まっているという。そこで、新しい研究の種を見つけ出すため、関連している企業や大学などとネットワークの構築を始めたところ、素材メーカーですら持っていない知見がまだまだたくさんあることがわかった。麺ののどごしとは科学的にどう説明できるのか、だしは何が良いのか。科学的な追及によって、「うどん」のおいしさはもっと広がっていくと考えている。
食の未来をつくる研究者を求めています
食のプロ、はなまると科学の融合をさらに加速させるための1つの方法が「研究費」の設立だ。健康についてどんな研究が行われているのか、新規性のある素材にはどういっ
た知見があるのか。食と健康は、はたしてどんなかたちで結びつくのか。研究者を応援しながら、専門家が今、健康について何を知り、何を考えているのかを知りたいと思っている。「ゆくゆくは、研究者が研究している新しい素材を使ったメニューの商品化など、実際にコラボレーションできる研究者との出会いがあるといいですね」。長野さんはこう期待を寄せる。企業と共同で何か新しいプロジェクトに取り組んでみたい人、一緒に新しいことにチャレンジをしてみたい研究者は、はなまると一緒に挑戦してみてははいかがだろうか?
(文 徳江 紀穂子)