研究者のキャリア戦略
東京大学 石浦章一 教授
研究を仕事にする。そんな目標に向かって、ひたすらに実験を重ねる日々。しかし、実験を頑張っているだけでは、競争の厳しいアカデミアの世界で研究職に就くのは難しい。研究者になるためには、キャリア戦略を立て、必要なスキルを伸ばし、実績を重ねる必要がある。
東京大学大学院総合文化研究科の石浦章一教授に、研究者になりたい学生がとるべきキャリア戦略を聞いた。
研究者の実績は、論文の数とその引用数、掲載された雑誌のIF(Impact Factor:インパクトファクター)などによって評価される。実績が無い若手研究者にとっていかに早く多くの実績を蓄積していくかが仕事として研究をするためのポイントだ。しかし、若手研究者のキャリア戦略を考えた場合、コンスタントに論文を投稿することは実績の蓄積のほかにもう1つ重要な意味を持つ。研究テーマをゼロから生み出し、試行錯誤の末に結果を出し、1つの成果としてまとめあげる中でこそ、研究者としてのスキルは向上するからだ。数多くの論文を書く中で自らの研究者としてのスキルを高めてみよう。
研究者として必須なスキルを身につける
[計画]研究のストーリーを描く
研究を論文にまとめるためには、構想段階から仮説を立て、結果を予測し、1つのストーリーを描くことが必要だ。1つの結果を説明するために必要なデータをもれなく記載し、抜け漏れない論理展開を心がけろ。
トレーニング
図だけで論文の要旨をまとめる。論文の内容を図だけで説明できれば、論理展開に隙はない。文章に頼らず結果を説明できる図のイメージを頭に焼き付けろ。
[実験]再現性のあるデータを出す
どんなに実験をしても、再現性がなければ意味がない。正確な手順で行う実験ならば失敗からも発見が見つかるはず。原理を理解し、丁寧に実験を行う癖をつけろ。
トレーニング
どんなに実験をしても、再現性がなければ意味がない。正確な手順で行う実験ならば失敗からも発見が見つかるはず。原理を理解し、丁寧に実験を行う癖をつけろ。
[英語]英語の論文を短時間で書ける
英語の論文を短時間で書ける人は、論文で書かれた重要な情報を短時間でピックアップできる。書くスピードと情報収集のスピードでまわりの研究者に差をつけろ。
トレーニング
英語の論文を読み、ポイントを指導教官や同僚に紹介する。短時間で書くコツは、英語論文に必要な情報を把握していること。その情報を再構築し、自分の論文作成の際に活用できれば、スピードは格段に向上するはずだ。
[表現]自分の研究を魅力的に表現できる
研究者として生きるためには、研究資金の獲得が不可欠。科研費、企業との共同研究を問わず、資金を得るためには、相手に自分の研究を魅力的に表現できるかが重要。相手の興味・関心に合った表現に変えるだけで、研究の評価は大きく変わる。
トレーニング
専門外の人に自分の研究の魅力を説明する。研究者といえども分野が違えば相手の研究のすべてを一瞬では理解できない。初めて知る相手が興味を持つ知るポイントを知り、相手に伝わる表現の仕方を工夫し続けることが、研究費を引き出す近道だ。