「健康元年」のはなまるとともに広げる外食産業の可能性

長野裕一さん 株式会社はなまる 素材開発部

はなまるのチャレンジと進化

他社にはマネできない付加価値をつける。2011 年11 月に発足した素材開発部では、そのために健康を基軸とした商品開発に邁進している。たとえば、油とカロリーが気になるかき揚げは、天ぷら粉などに工夫を施すことで、47% の油を削減することに成功、一部店舗に導入して話題を呼んだ。今年2013 年は、はなまるでは「健康元年」と位置づけられているという。「ヘルシーなかき揚げを1 個出したところで、健康は謳えない。今年から、健康をキーワードとしたメニューをどんどん導入していこうということで、健康元年と位置づけています」。素材開発部の長野裕一さんはそう語る。この言葉通り、はなまるは今年から限定メニューだったサラダうどんを定番メニュー化した。さらに4 月1 日からは、1 玉にレタス1 個分2.1 g の食物繊維を練りこんだ食物繊維麺を一気に全店舗に導入した。これまでの常識にとらわれることなく、消費者の健康志向に対応して付加価値をつけるチャレンジは、今まさに始まったばかりなのだ。

リバネス研究費で感じた「脅威」と「可能性」

はなまるで昨年から取り組み出したのが、若手研究者への支援活動だ。リバネス研究費はなまる賞を設置、「健康と食の関連についての研究」というテーマで申請を募集した。「まず驚いたのは、応募数が多かったこと。ほとんど応募がないのではと思っていましたが、たくさんの応募をいただき、どれも素晴らしい内容でした」。1 件を採択する予定だったが、悩んだ末、2 件をはなまる賞に採択した。その観点は、「メニューに応用できる基礎知識かどうか」だったという。「たとえば、九州大学の中村氏の研究テーマにあった、うま味シグナルがどう腸で判定されているかを調べる研究は、目や雰囲気、舌で味わうことが通念である外食企業にとって、はっきり言って脅威です。でも早い段階でそれに気づいていれば、いち早くメニューにも応用できると考えました」。メニュー化までの道程がその長短を問わず明確であり、素材開発部の頭脳を活性化させて未来への可能性が開ける研究テーマが、強くはなまるに響いたのだ。

次の外食産業を創出する研究者を応援したい

今回のはなまる賞のテーマには、前回から少し変化がある。「実践的」というキーワードを盛り込んでいるのだ。そこには、どのような考えがあるのか。「外食としては、お客様へのアウトプットはやはりメニューであり、メニューを通してお客様の健康を実現したいと私たちは考えています。どのように研究がお客様の健康につながるか、というところまでを想定した、『提案』をいただきたいと思っています」。求められるのは、既に存在する、栄養バランスやカロリー計算を考慮したメニュー研究ではなく、新たな「健康」の概念や観点を打ち立てるようなアイデアだ。健康を軸とするという芯は変わらない。はなまるはその先にある何かを創造していきたい若手研究者のチャレンジを待っている。(文・塚田 周平)