SBN180_世界初!燃焼波を利用したロケットエンジンでの飛行に成功

SBN180_世界初!燃焼波を利用したロケットエンジンでの飛行に成功

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先月14日の新型ロケット「イプシロン」の打ち上げ成功のニュースを覚えているでしょうか。爆炎とともに空へ向かってぐんぐんと進んでいく打ち上げの様子は映像で見ていても圧巻でした。このように飛行方向と逆にガスを噴射し推進力を生み出すロケットエンジンは、いわばロケットの心臓部。しかし、現在主に使われている液体燃料エンジンでも、大きな燃料タンクが必要であるなどの課題があり、新しいエンジンの研究開発が進められています。

今回、名古屋大学などの研究グループが、次世代ロケットエンジンとして期待されるパルスデトネーションロケットエンジン単体での飛行実証試験に世界で初めて成功しました。このロケットエンジンは、デトネーションと呼ばれる爆発的な燃焼を利用しています。ろうそくなど燃料が燃えるとき、火のついている場所では燃料の酸化反応が起きています。空気中の酸素が酸化剤となり、酸化剤と燃料の混合気体に火から熱が渡ると、酸化反応が進んで次の火になります。これを火炎伝播と呼びます。ろうそくやガスコンロの火炎伝播速度は秒速数十cm~数m程度ですが、デトネーションでは秒速2~3kmという超音速で火炎伝播が起こります。超音速で移動する物体の周りには衝撃波が生まれ、衝撃波によりガスが圧縮されます。ガスは圧縮されると温度が上昇します。通常、エンジンは燃焼温度が高いほど熱効率が高くなるため、燃焼前にガスを圧縮し温度を上げておきます。しかし、デトネーションを利用すれば、既存のエンジンに必要な圧縮機もいらない単純な構造で、高い熱効率が実現できるのです。

また、酸素を外部から取り込むジェットエンジンと異なり、真空でも作動する必要のあるロケットエンジンではガスの供給システムが必要になります。今回の新エンジンでは、独自開発された回転バルブによってガスの供給頻度を高め、なるべく早い間隔でデトネーションを起こすことで、飛行可能な推進力が得ることに成功しました。デトネーションを利用したロケットエンジンにより、高い熱効率の達成やエンジンシステムの大幅な軽量化が可能となり、 宇宙開発の未来を切り拓くことが期待されています。

【参考】http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20131021_eng.pdf

記者(瀬野)

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