変わりながらも受け継がれる技 株式会社ヨシズミプレス

変わりながらも受け継がれる技  株式会社ヨシズミプレス

トレードカラーの赤が映える工場で町工場のイメージを覆す金属プレス加工会社の株式会社ヨシズミプレス。カッコン、カッコンと自動プレス機の音が1日中響く同社の工場は、3代目である専務を始め、若い活気で満ちている。

「汚い、暗い、危険」のイメージを払拭

「かっこいいプレス屋をつくる」それが同社が掲げるモットーだ。「汚く暗くて危険」というイメージのある町工場で、作業着をやめ、オリジナルTシャツなどのユニフォームをつくったほか、服が汚れない、怪我をしにくい安全な機械も導入した。その努力もあって、1980年、墨田区から魅力的で働き甲斐のある職場「フレッシュゆめ工場」の第1期のモデル工場に認められる。「せっかく育てた若い人が働き続けたくなるような場所にしようと思ったのです」。専務取締役で3代目の吉住研さんはこう話す。1997年には事業所、2011年には新本社を建てるなど従業員がより快適に過ごせる空間づくりを目指す。「きれいな職場にすると、その姿勢が製品にも現れます」。デザイナーとコラボしたインテリアグッズの自社開発など、精力的に新しいことにも取り組んでいる。狙いどおり、若い人も多い会社だ。

いつもの商品にある技術

ヨシズミプレスは吉住さんの祖父が創業した会社。プレス加工とは金属などの素材を金型で挟み、プレス機によって何度も力を加え、徐々に目標の形に仕上げていく加工方法だ。通常プレス加工は、金型は金型屋、プレスはプレス屋と独立して仕事をするが、ヨシズミプレスでは金型製作のノウハウも獲得。金型製作からプレス加工まで一貫して注文することができるので完成までのコミュニケーションがスムーズだ。そのノウハウや彼らが開発した加工装置を自社にも取り入れようと、全国から視察が訪れる。おそらく誰もが使ったことのあるボールペンの金具や、ドライヤーの網目部品、携帯電話内部の精密部品まで、様々な部品を扱っている。より良い製品をつくるために、図面にない加工を発注元へ提案することもある。これまでに最も難しかったのは度数を調整できるメガネの部品。金属に力を加え圧縮し、凹状にする絞り加工に初めて挑戦した。また,0.5mmのピンを扱うために顕微鏡を見ながらダイヤモンドで金型を磨いて調整する作業は大変だったが、同社の新しい技術となった。トレードカラーの赤が映える工場で町工場のイメージを覆す金属プレス加工会社の株式会社ヨシズミプレス。カッコン、カッコンと自動プレス機の音が1日中響く同社の工場は、3代目である専務を始め、若い活気で満ちている。

受け継がれる職人のセンス

「一番うまくないと人がついてこないよ、と言われて、工業高校卒業後から入社することにしたんです」。という吉住さん。工場を遊び場とし、幼心に自分が継ぐんだな、という気持ちでいた3代目はすでに覚悟が決まっていた。近代的な工場で、最先端のセンサ技術を搭載した機械も導入し、ほとんどの工程が自動化されているプレス加工だが、最後に職人の勘は欠かすことができない。「金型の中で起こっていることをイメージできないと、異常が起こったときの原因を探せない。一人前になるにはそのセンスが磨かれる必要があります」。と吉住さんは話す。今後はフィルムや樹脂など金属以外の素材にも挑戦していきたい、というヨシズミプレス。頼もしい3代目を得て、65年の歴史は次世代に続いていく。

 

|吉住 研さん プロフィール|

日本工業大学付属高校(現日本工業大学付属駒場高校)を卒業後、同社に入社。それまで社内になかった絞り技術の習得やVE(Value Engineering)提案を積極的に取り組む。3年前からはデザイナーとコラボレーションした商品開発に着手するなど、プレス加工の可能性に挑戦している。