多様性を求め、研究資材の価格破壊をスタートする

多様性を求め、研究資材の価格破壊をスタートする

有限会社チバプラス 代表取締役社長 千葉 勇希 さん

墨田区の工業団地の一角でプラスチック射出成型を生業としているチバプラス代表取締役の千葉勇希さん。ビジネスの多様性を重視してきた同社は、今回、研究者と一緒に新しい試みを行うつもりだ。

1 業種の下請けだったリーマン以前

千葉さんは、ちょうど取材を行った 2014年の7月に父親から事業承継を受 け、代表取締役に就任したばかりだ。設 立当初は玩具プラスチック製品を担い、 30年前から車の部品の受注を受け始め た。車の部品は1回受注するとモデル チェンジをするまでに4年以上ある。毎月2万個程度の部品発注が入り、受注 体制にブレがないことで良いビジネスに なった。しかし、リーマンショック以降、 状況が一辺する。「これまで 3 社のお客様 に製品を届けていれば仕事が成り立った のです。でも、全く上手くいかなくなっ てしまい、10 台あった成形機を処分する などして事業を整理しました」。同じよう に量産される文具や雑貨などの開拓をし、 持ち直すことができた。

金型が価格のハードルをあげる

町工場が事業を多様に手がけることが 難しい理由の1つとして、金型代の高さ が挙げられる。プラスチック業界におい て多くの製品は、金型に材料を注入して 成形を行う。その後、図面あたりの体積 を出し、素材を選び、それが何グラム必 要なのか、どの機械を何時間回すと注文 数がつくれるのかを算出することで、製 品の価格は決まる。金型代は 100 万円か ら 1000 万円にもなることがあり、この ような製造スタイルになると、どうして も大量生産できるものをつくらなくては 減価償却ができない。このスタイルが、町工場が新しい製品に挑戦する上で障害 となっていることもあるのだ。「町工場 と組む上で、理解していただきたいポイ ントです。でも研究現場にも大量につく りたいものはきっとあると思います」。

製品の幅を広げてていきたい

1 業種に頼ることの危険性を身をもって知ってからは、商品の多様性は大事だ と実感する。「町工場は請け仕事、言わ れたことだったり、図面を見ればつくれ るのですが、自分から発信することは苦 手。異業種の人に出会って、いろんな方 向に広げていかないとって考えているん です」。時代に適応し、活躍の場を広げ てきたチバプラスは今も新規事業に飢え ている。研究者との新しい出会いは歓迎 だという。「私たちももっと研究者に話を 聞いてみたいのです。なぜこの仕様なの かが理解できれば、もっと価格が落ちる、 もっと良い仕様になる提案ができると思 います」。コミュニケーションによって解 決できる課題は必ずある。最初の一歩を 踏み出すために、研究者側の一歩も必要 だ。 (文 齊藤想聖)

|千葉 勇希さん プロフィール| 墨田区との取り組みで開発されたオリジ ナル商品「お皿まな板」が経済産業省クー ルジャパン 365 プロジェクトに選ばれ、 これからも、人と人との繋がりで生まれ たアイデアで開発にも力を入れたい。元 TASK 振興委員、フロンティアすみだ塾 副会長。

 

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