地域に根差す、コミュニティとしての居酒屋 養老乃瀧株式会社

地域に根差す、コミュニティとしての居酒屋 養老乃瀧株式会社

長島一誉さん 企画部部長 インタビュー

2014年8月、居酒屋チェーンの老舗「養老乃瀧」で小学生親子向けにサイエンス教室が実施された。会場は系列居酒屋が多数入る池袋本社ビル。子供向けのサイエンス教室とは縁がなさそうな場所だ。養老乃瀧がこのような活動を行う背景はいったいどこにあるのだろうか。

居酒屋でDNAの実験教室!?

 養老乃瀧本社がある豊島区を中心に小学生親子を対象として行われたサイエンス教室。テーマは、これまた居酒屋とは縁がなさそうな「DNA」だ。実験の内容は、生き物の設計図であるDNAを、いろいろな食材から取り出してみようというもの。家庭にある食材や洗剤で簡単にできるDNAの抽出実験を体験してもらうことで、夏休みの自由研究の手助けにしてもらおうというねらいだ。実験でDNAを見たあと、生き物に共通するDNAからタンパク質をつくる仕組みや、食べ物を食べて私たちの体をつくるとはどういうことかを親子で学んだ。

居酒屋が加速する地域のつながり

 今回の教室の実施に至った背景には、「地域密着」であることを大切にしてきた思いがある。昭和13年、元々は大衆食堂から始まり、昭和31年からフランチャイズの先駆けとして全国に広がった養老乃瀧は、いつの時代も地域の人が集まってくるコミュニティだった。各店のおすすめ料理や、店のロケーションに合わせメニューが違ったり、繁華街・オフィス街・住宅街などそこで生活をする人に合わせて営業時間が違ったりする。「チェーンらしくないチェーンと言われるんだよね」と長島さんは笑う。地域の人が集まってくる居酒屋だからこそ、育児に挑戦するお父さんが情報交換を行ったり、親子が一緒に会話をしたりといったコミュニティが生まれる場所になるのだ。

コミュニティの中心としての役割を拡げる

 DNA実験教室の最後には養老乃瀧本社にある研究所を見学し、安心・安全な食事を可能にしている品質管理の重要性を伝えた。つい先日、中国の食品工場の品質管理体制が話題となったこともあり、食の安心や安全に対する関心は高く、熱心に質問をする保護者の姿も見られた。「外食企業である我々がどの様な形で食の安全と品質を維持し、店舗を通してお客様に提供をしているのか?こうした取り組みについて知らない人も多い」と言う長島さん。テレビやマスコミからのなんとなくの知識ではなく、正しい意味を知って判断することが必要だ。今回の教室は、家庭で食の安全を考えるきっかけにもなっただろう。

 ほかにも、保父経験のある社員が育メン講座を開講したり、父の日に子どもたちがお父さんのために料理をつくる料理体験教室を行ったりと、様々なシーンで地域の人々がつながる場を提供している。次は、お酒を提供する場所として大学生に向けて、自分の体質やアルコールの影響を知って楽しくお酒を飲むためにはどうしたらよいか考える機会を提供する新しい企画も考え中だ。「お酒を飲む」ため以外にも、居酒屋を中心にして広がる人と人とのつながりがますます増えていくかもしれない。