お客様の課題が企業の価値を高めていく-墨田区の塗装技術-
株式会社優工社
代表取締役 神尾 弘子 さん
墨田の地で創業してはや80年。株式会社優工社は塗装を専門にする町工場だ。大量生産の工場がアジア圏に多く移った今でも、塗装という加工技術においては細かいノウハウと改善技術により、日本の町工場でも活躍できる場所がある。株式会社優工社ではそんな強みを活かして、みなさんもよく知っている大手ファストファッションブランドの塗装を請け負っている。歴史ある会社を引っ張る4代目代表取締役の神尾弘子さんにお話を伺ってみた。
新たな機能を付加する塗装
塗装といったとき、みなさんは何を想像されるだろうか?塗装は、単に着色し、装飾するためだけにあるのではない。すべり止め、蓄光、飛散防止などの機能を付加し、長く安全に使うために欠かせない役割を持つのだ。「ボタン1つとっても色が付いてればいいわけじゃない」という神尾さん。一昔前は、船にボタンを載せて海外から輸送し、蓋を開けてみたら全部錆びていたことが問題になった時期があった。錆びたボタンを使用することなどできるわけもなく、錆びない塗料や塗り方の研究をする必要がある。こうした機能塗装において同社は新しいニーズに対する挑戦を積極的に続け、品質、納期、価格などすべての面で世界中から信頼されている。アジア大陸に生産工場の中心がある今でも、多くの有名ファションブランドが部材の塗装を優工社に頼っているという。
研究開発する町工場
「1個の製品から対応させていただきますよ」という神尾さんのところには、いつも新しい相談が持ち込まれる。「塗装は化粧と同じ」というように、製品を洗浄し、ゴミを落としてから、下塗りをし、剥がれないようにファンデーション代わりの加工をする。素材の性質上塗りにくいものや洗うと剥がれてしまうもの、別のところで塗装をして剥がれてしまったものなど、同社には難しい案件が持ち込まれる。「水と空気は塗れないけれどそれ以外には塗れる」と先代が豪語するように、試行錯誤で研究を繰り返し、不可能を可能にしていく。わからないことがあれば、大学の先生や塗料の専門家のところに出向き、情報交換をしたり、実験をしたりもする。素材の研究も必要だ。こうしているうちに、「なんでもやってくれる」という評判が口コミで広がり、前述の地位を獲得したのだ。
100年続く企業を目指して
一見効率の良くない1個口からの注文を、神尾さんが受けるのには理由がある。「お客様から宿題をもらうと、できることが増えて行くんですね」。新しい案件は小口のことが多く、持ち込まれた課題にあたるうちに、会社としての幅が広がっていくのだ。「最初に小さな案件を受けたのは、ヨーロッパのスキー選手から自分のスキー板の塗装が剥がれにくくならないか相談されたことがきっかけでした」。以来、大企業の新規開発など、お客様と二人三脚で課題を解決している。小ロットに対応するために、1個からでも色を配合し、塗装できる調色機カラーマッチングコンピュータなど、先端の機器も積極的に導入する。「1つの手法で20年仕事が続くのは稀な方。大量生産の注文は海外にいってしまうし、どんどん新しいことにチャレンジしてできることを増やしていかなくては。私は石にしがみついてでも100年続く会社をつくっていきたいと思っています」。神尾さんの強い意志が、この町工場の未来を支えている。
塗装の優工社(ゆうこうしゃ)
〒131-0041 東京都墨田区八広6丁目16−4
03-3614-2311
金属、樹脂製品、ゴム等に焼き付け塗装している会社です。短納期、小ロット多品種な品物も対応していおります。また、ガラスの飛散防止塗装や蓄光塗装や蛍光塗装の付加価値を付ける塗装も得意です.