畜産関連ロボットの進撃

畜産関連ロボットの進撃

担い手の高齢化と減少、新規就業者の不足。人の手に依存した高度な作業が多い畜産関連業界も、産業ロボットの導入が求められる領域である。例えば、食肉加工においては、加工対象が不定形軟弱体であるといった特徴があり、その導入が遅れていたが、近年のコンピュータ数値制御の高度化などにより、複雑な制御を実現した工業用ロボットが畜産関連産業へも続々と進出している。

畜産ロボットの先駆け、オランダの搾乳ロボットアストロノート

1992年に上市したアストロノートは、レリー社(オランダ)の搾乳ロボットである。日本には1997年にその第1号が導入された。搾乳ロボットは、搾乳作業という労働を単純に担うだけでなく、飼養管理プログラムのデータで効率的な管理をサポートする。例えば、泌乳量に応じた搾乳は、生産乳量の増加のみならず乳房疾病の低減に貢献する。また、搾乳作業から解放された酪農家が、牧畜全般の業務にゆとりをもって取り組めるようになり、生産性の高い経営を可能にした。近年においては、搾乳だけでなく、給餌ロボット、清掃ロボット、仔牛の授乳システムなど、多くの牧畜業務のロボット化が進んでいる。そして、これらのロボットに対して業務指示ができる牧畜管理システムがスマートフォンのアプリケーションで提供されるなど、めざましい発展を続けている。今後さらに、搾乳のタイミングで身体情報を収集し高度な個体管理を実現するシステムや、多くの業務をこなす汎用型ロボットの開発と自律化により飛躍的に生産性の向上が実現されるだろう。

急速に進む食肉工場の高度自動化

問題に直面しているのは生産現場だけではない。生産後の屠畜、加工を経て商品となる食肉業界においては、高い技能を持った従事者の高齢化も深刻だ。

現在、先行して上市している鶏肉処理のロボット化は、除骨作業に留まらず、解体、精肉加工までそのほとんどの作業のオートメーションが実現している。この技術は、豚や牛にも応用されてきた。また、かつて職人の技が支えてきた食肉加工の現場においてもロボットの活躍が目覚ましい。株式会社前川製作所のハム切断ロボットHAMDAS-Rが登場、2010年頃を境に急速に自動化が進んでいるのだ。2010年の第4回ロボット大賞で最優秀中小・ベンチャー企業賞 (中小企業庁長官賞)を受賞しているHAMDAS-Rは、豚のもも肉の除骨作業の自動化をX線認識システムや職人と同じく1本のナイフを動かすことで実現している。対象となる豚のもも肉は個体差が大きく、またその形状も複雑であることから自動化が困難であったが、X線によりその形状を認識し、さらに職人さながらにナイフを使って骨に沿って切る「筋入れ」の技術を見事に自動化した。この技術の応用は、畜産分野だけにとどまらない。同じく不定形軟弱体である魚や野菜の加工にも適用されれば、畜産関連以外の食品加工の現場も大きく変化するに違いない。