未来の仕事ファイル2:プラント・エレクトロエンジニア
プラント・エレクトロエンジニア:植物からどう電気を取り出し、どう活用するかを構築するスペシャリスト
電気を発する植物に電球を直接繋いで、天然のランプとして点灯。「そんなの、おとぎ話の中だけじゃないか!」と、呆れられてしまいそうな話です。けれど、直接電力を植物から取り出すテクノロジーは既に存在しています*(注2)。樹木の根と、その周りを囲む土との電位差を利用すれば、当然電流は流れます。また、植物の根から土中に放出される炭水化物を、分解する過程ででる電子を集めることもできます。植物があれば、LED程度の光なら難なく点灯させることができるのです。現在そこまでのエネルギー効率は実現していませんが、近い将来、街中より森の中の方がLEDでキラキラ輝いているのかもしれません。
鍵となるのは植物から電気を取り出すプローブです。このプローブの開発が進めば、都市計画の概念も変化するでしょう。テクノロジーの恩恵を受けて、植物に囲まれた家屋であれば、電力の供給は自宅で行えます。こんな家屋を並べることができるような条件を満たすグリーンな都市設計は、現代ではちょっとアグレッシブ過ぎるかもしれません。ジャングルの中のようであれば、それに伴って、小さい虫も増えるでしょうし、「快適」という言葉の定義も今とは異なるものになるかもしれません。テクノロジーを使い倒した先に、ヒトはよりテクノロジーを意識しないようなライフスタイルに回帰するのでしょうか?
想定できるシナリオ:プラント・エレクトロエンジニアのお仕事例:植電地下鑑定士
2025年、植物から取り出せる電力量を正確に測定することが出来ることは、その植物のまわりの地価を把握することと同じ意味を持ちます。不動産業者はこぞって、植物と電気電子のどちらにも精通する人材を集め始めます。そう2015年でいうデータサイエンティストのように、プラントでエレクトロな世界を理解できる研究者は一気に高給取りになったのです。博士を取って、新卒年棒1500万で雇われた彼らは、世界を足で駆け回り、有望な土地に目をつけ、買い漁っているのかもしれません。
プラント・エレクトロエンジニアの実現はすぐそこに?
植物があるところが発電所に変わるモジュール:Plant-e (http://plant-e.com/)
記者のコメント
いわゆる「エコなライフスタイル」を科学技術が思いっきり加速させた姿を想像してみました。エコな人ほど、理想の世界を実現するためのテクノロジー好きである必要がある。そんな世の中が待っているのかもしれませんね。案外、近い将来家の周りの植物は電力を生み易くした「組み換え植物」だったりして。
大上能悟 (大阪大学工学部 応用物理専攻)
*注1:オックスフォード大学が2005年に設立した学部。現代特有のリスクと機会について分野融合的に研究している。
*注2:植物はもともと、根をはっている土と自分自身の間に電位差を持っています。植物が生きている間維持されるの電位差を利用して、微弱な電磁場を感知するセンサーをつくったMIT発のベンチャー企業「VoltreePower社」(http://voltreepower.com/index.html)の技術です。