聖光学院中学校・高等学校で宇宙エレベーターに関する出前研究教室を実施しました

聖光学院中学校・高等学校で宇宙エレベーターに関する出前研究教室を実施しました

 聖光学院中学校・高等学校(学校長 工藤 誠一)において、2018年8月31日・9月1日に出前研究教室を実施しました。今回の教室は、中学1年生から高校1年生、希望者40名を対象に、「宇宙エレベーター開発プロジェクト」というテーマで実施しました。

 

 宇宙エレベーターとは、地球から宇宙までのばしたケーブルをクライマーと呼ばれる昇降機で移動する装置です。これはロケットやスペースシャトルに比べて安価に宇宙に行くことができると期待されています。クライマーの基本構造は2つのタイヤでベルトを挟み、モーターの力だけで登っていきます。本実験教室ではこの構造を用いて、天井から吊るしたベルトをつたって登る自走式クライマーを試行錯誤して作成し、ものづくりの意義や面白さを体験しました。

 

 本実験教室の講師を務めた株式会社リバネス 尹 晃哲は牛専門の獣医師の経験から、今回はただクライマーを作るのではなく、現在畜産業界が抱えている問題の解決や人類が宇宙へと向かうときに備えとして、「宇宙に牛を連れて行けるクライマーの作成」を開発ミッションを掲げました。約6人の班に別れた生徒は協力し合いながらオリジナルのクライマー開発に挑戦しました。いざ開発をはじめると、与えられた基本構造の設計図では、そのままでは登らないという問題に直面しました。それぞれの班では問題点は何か、改善するにはどうしたら良いのかアイデアを出し、試行錯誤を繰り返しました。

 

 講義の中盤には、宇宙エレベーターの実現を目的に設立されたZip Infrastructure株式会社 代表取締役社長 須知 高匡による講演『本気の失敗には価値がある』が行われ、開発のヒントと「本気で考え尽くした結果の失敗からしか新たな学びを得ることはできない」というメッセージが伝えられました。その後、開発のヒントをもとに、試行錯誤を繰り返しながら、クライマーに修正を加えていきました。最後には中間発表会を行い、他班の試行錯誤のポイントや班の強みを再認識したところで1日目は終了しました。

 

 2日目は、講師 尹から「基本構造に囚われすぎていないか?もっと自由な構造を試してみたら良いのではないのか?」という言葉でスタートしました。基本構造に独自のアイデアが加わったところで、3Dプリンターで作られた牛の模型をクライマーに設置するというルールを追加し、バランスや動力の調整を行い、完成させました。その結果、牧場をそのままクライマーにしたものや、太陽光で牛を調理しながら宇宙に行くクライマーなどスタッフも想定していない独創的なクライマーが出来上がりました。

 

 次に行ったコンペティションは、プレゼンテーションと走行距離によって評価が決まります。それぞれのコンセプトや設計をする上での工夫についてプレゼンテーションを行った後、クライマーの走行距離で競い合いました。テスト走行では登っていたクライマーも本番に対するメンテナンスが不十分で、パワー不足やバッテリー切れが発生し、その場で調整するなど、白熱したコンペティションとなりました。結果は、牛の牧場をクライマー上に展開するアイディアをプレゼンテーションし、教室中を魅了した班と、安定性を追求し、登り続けた班が表彰されました。クライマーが登らない班もありましたが、参加した生徒は全員、目的達成のために最後まで諦めずに試行錯誤を繰り返していました。

 

 2日間の授業の最後には、講師 尹から「目標達成のために試行錯誤を繰り返そう」というメッセージを伝えて締めくくりました。宇宙エレベーターの基本構造という「情報」は理解していても、それを実際作るとなると考慮すべき課題がたくさんありました。今回の実験教室を通して、「情報」と「経験」が掛け合わさり、「知識」になることが目標を達成する上で重要だということを参加した生徒全員が体感できたのではないでしょうか。

 

〔参加した生徒の感想〕

  • 中々うまくいかず、苦労したけれど、何回も試行して少しずつ良いものに仕上がっていることが実感できた
  • 全力を出しきらないと自分に何が足りなかったのかが分からない
  • キット等じゃなかったので、自分たちの好きなように形を作れて楽しかった
  • 中々頭で考えてるようにいかなかった
  • 試行錯誤や本気でやることを自身の経験から語っていてわかりやすかった

 

〔参加したスタッフの感想〕

 現在、インターネットやスマートフォンの普及により誰でも簡単に「情報」を手に入れることが可能になりました。しかし、手に入れた「情報」はそのまま使える「知識」とはなりえません。「情報」は実際に手を動かして経験することで、はじめて「知識」へと変わっていきます。今回は宇宙エレベーターのクライマーの基本構造という「情報」を手に入れて、試行錯誤を繰り返すことで問題を少しずつ解決していくという「知識」への変換を経験しました。今回の教室を通して、「情報」を「知識」に変換することが、夢を叶えるために必要であると感じ取ってもらえたと思います。

〔概要〕

日時:2018年8月31日(金)12:30〜16:30

   2018年9月1日(土)11:00〜16:00

会場:聖光学院中学校・高等学校

対象:中学1年生〜高校1年生 40名

主催:株式会社リバネス

テーマ:宇宙エレベーター、ものづくり

 

<本件に関するお問い合わせ>
株式会社リバネス
教育開発事業部
担当:岸本
メールアドレス:[email protected]
TEL:03-5227-4198