静岡雙葉中学校・高等学校で土壌生態系に関する出前研究教室を実施しました

静岡雙葉中学校・高等学校で土壌生態系に関する出前研究教室を実施しました

株式会社リバネスは、静岡雙葉中学校・高等学校(学校長 土屋 枯野)において2019年10月27日に研究教室を実施しました。今回の教室は、中学2年生から高校1年生、希望者27名を対象に、「身のまわりの足もとの世界〜土壌生態系をのぞいてみよう!〜」というテーマで実施しました。

研究教室では、小笠原諸島やニュージランドといった大自然の中でカタツムリの進化に関する研究に取り組んでいたリバネスの若手スタッフが講師となり、「土壌動物採集や観察・土壌中の硝酸態イオン測定」の実験を行いました。また今回は環境調査分析を行う株式会社東海テクノの協力で、土壌微生物活性の測定もあわせて行いました。これらの実験を通して、普段何気なく目にしている風景の中に世界初の発見が存在することを学び、研究活動に興味を持ってもらうことを目的としました。

 

研究対象は、学校近隣にある駿府城公園の土壌中に生息する生物です。導入講義では、身近ながらも生態系を支える土壌生物の重要性と、文献を例に駿府城公園内という狭い範囲でも地点ごとに土壌生態系が異なる可能性があることを伝えました。また、今回の生徒による調査や研究は誰も調べたことがなく、世界初の発見となること、それが研究であることを講師より伝え、研究活動への意欲喚起を行いました。

 

そして、どのような環境要因が土壌生態系に影響を与えるのかという仮説を生徒たちは慣れない中、一生懸命考え、仮説を班ごとにたてました。土壌の状態(固さや、粒子のサイズ、湿り気など)や、人間活動(通行量、生えている植物など)が要因ではないか、などの仮説をたてました。このことにより、普段目にしている駿府城公園を新たな着眼点で考え始めました。

その後は実際に調査地点へ行き、各班1地点の土壌採取に加え、各地点がどのような環境であるか、仮説を検証するために観察と記録を行いました。生徒たちは各地点熱心に観察し、段々と目がなれてくると仮説以外の面でも様々なものを観察している様子が見受けられました。

 

土壌を採取して教室に戻ってきた後は、3つの実験を行いました。1つ目に、ハンドソーティング法とツルグレン法によって土壌動物を採集し、種の同定を行いました。またどんな種類が何匹いるかをかぞえ生物の多様度指数という値を計算し、生物多様性を比較できる数値に変換しました。これは論文などでも使われる手法の1つです。2つ目には株式会社東海テクノのご協力で、微生物活性の測定を行いました。この値により、どれくらい土壌微生物が多様であるかがわかります。3つ目に硝酸態イオンの測定を行いました。硝酸態イオンは植物の栄養分となる物質で、生物の遺骸が微生物に分解されることでできる物質でもあります。

実験から得られた3つのデータを、各班最初に立てた仮説に基づいて考察をし、班ごとに発表を行いました。仮説通りだった点や、仮説どおりにいかなかった点、仮説には入れていなかったけれど不思議だった点があり、「なんでここは仮説通りではなかったんだろう?」「これを調べたらこんなことがもっとわかるかもしれない」などと次の疑問や課題につながったと思います。

 

今回の実験教室のポイントは2つあります。ひとつは、「仮説→検証(実験・観察)→考察→新たな疑問の出現」という研究のサイクルを体験したことです。参加した生徒たちはこの研究サイクルを回せるようになったことで、身近な疑問を研究のテーマとして掲げ、研究をスタートさせることができるようになってきます。もうひとつは、身近な場所を研究のフィールドにしたことと安価な機材を使用することで、参加生徒が研究活動を身近なものと感じられるようにしたことです。今回ツルグレンで用いた装置はすべて100円ショップで手に入れたものであり、硝酸態イオン測定装置も学校の部活動の活動費などであれば購入できる程度の機材でした。自分が興味を持った事をもっと調べたいと思ったときに、高価な実験器具がなくても工夫次第で研究ができるという生徒の実感に繋がったと思います。

 

今回の経験で、生徒たちは毎日目にしている風景が研究テーマになることや世界初の発見に繋がるかもしれないことを学びました。今後自分達が見つけ出した新たなふしぎから探求への手助けになると思います。

 

〔参加した生徒の感想〕

  • 普段、土壌生物のことをあまり知る機会がないので、良く知るいい機会となりました。また研究の仕方や道筋の立て方も知ることができ、とても勉強になりました。
  • 私は土壌に全く興味がなかったですが、身近にいる虫や植物を調べて興味が湧き、もっと調べてみたいと思いました。
  • もっと駿府城の中でもいろんなことを調べてみたい。季節や時期によっても変わるのか知りたい。
  • 土壌生態系というのは、とても身近でありながら、全然知らないことばかりだった。一人で調べるのはとても大変なことだけど、こうして協力して楽しんで活動ができてとても良かった。

 

〔参加したスタッフの感想〕

一見なんの変哲もなく見える景色の中にも、実は不思議なことやわかっていないことが隠れています。今回の実験教室では、生徒が普段登下校で毎日通るという公園を舞台に研究活動を行いました。生徒と一緒に観察や実験を行う中で、「毎日登下校している場所なのに、こんな不思議があるなんてびっくりした。」「土壌のイメージが変わった!」という言葉を生徒たちから直接聞き、身近に新たな発見をしてくれたことを実感しました。研究の素材は身近にあり、むしろ彼女たちしかできないことがある。そしてそれが世界初の発見になるかもしれないというメッセージが届いていると嬉しく思います。

 

 

〔当日の写真〕

〔概要〕

日時:2019年10月27日(日)9:00-16:30

会場:静岡雙葉中学校・高等学校

対象:中学2年生~高校1年生 27名

テーマ:土壌生態系、ツルグレン装置、土壌微生物

講師:株式会社リバネス 秋山佳央

 

リバネスでは、答えのない課題に挑戦できるような出前実験教室を全国の小中高校で行っています。実験教室の実施をご希望の方は以下のお問い合わせ先にご連絡ください。

■お問い合わせ先:

教育開発事業部 担当:滝野

地域開発事業部 担当:秋山

TEL:03-5227-4198

E-mail:[email protected]