再びバイオサイエンス分野で伝説を作るために〜BioLegendの挑戦〜

再びバイオサイエンス分野で伝説を作るために〜BioLegendの挑戦〜

FACS細胞解析の経験者は、マウス蛍光標識抗体製品を世界に先駆けて製品化したPharMingenの名前をご存じかもしれない。そのPharMingenの共同設立者であるGeneLay氏は、2002年に抗体の可能性を広げる新たな挑戦としてBioLegendという抗体のブランドを新たに立ち上げた。抗体の可能性にかけ、起業を行ってきた彼の人生観やビジネス哲学は、多くの示唆とチャレンジ精神にあふれている。

テクノロジーからビジネスを創造する

大学で獣医学を専攻していたLay氏が抗体を知ったのは免疫学の授業だった。1970年代後半、授業の中で紹介されたスタンフォード大学のHerzenbergらの論文ではモノクローナル抗体を利用して特定の細胞を選別できるだけでなく、がんの治療に使えることが報告されていた。コアとなる抗体産生細胞を作る技術は、のちにノーベル賞を取得する革新的技術。「これはすごい」。ここからLay氏の抗体の物語が幕を開けた。

1984年、友人のErnieHuang氏とともにモノクローナル抗体の技術を利用した診断キットの開発と販売でビジネスは始まった。場所は台湾。当時台湾のバイオテクノロジー企業は3つ。そのひとつがLay氏らの会社である。Huang氏が、ビジネスの場をシンガポール、アメリカへと展開していく一方で、Lay氏はルイジアナ大学の大学院へと進学していた。

そして1987年、大きな転機が訪れた。当時スタンフォード大学のHerzenbergの研究室で研究員をしていたHuang氏から連絡が入る。研究室で作った抗体を他の研究室に提供しているが、スタンフォード大学から抗体の特許の使用権が得られれば、これを製品化して多くの研究者に届けることができるのではないかというものだった。すでに、ヒトの抗体は製品化する企業が出ていたが、マウスの抗体でビジネスを興した人はだれもいなかった。

しかし、1981年のトランスジェニックマウス技術の開発を期に、さまざまな遺伝子が操作できるようになり、大きな分岐点を迎えようとしていた時代。これからの免疫研究が、主にトランスジェニックマウスを実験動物として使用することで飛躍的に発展することを予感していたLay氏は、Huang氏のアイデアと抗体の可能性にかけた。「ルイジアナ大学の修士号を1年半でとり終えて、起業するためにサンディエゴに車で向かったよ」。人生の転機に素早く判断できることが起業家に重要な資質と考える彼らしいエピソードだ。その年、PharMingenがサンディエゴに設立された。

 

研究者=カスタマー&コラボレーター

Lay氏は、PharMingenで研究者とコラボレーションして、研究者が持つ優れた抗体をライセンスしてもらい、製品化して世界中に展開するというBioLegendでも貫くビジネスモデルを確立した。企業が研究者の望むタイミングで新しい抗体をクローニングして製品化するのは、投資金額、開発期間からしても不可能であった当時において、製造にフォーカスするという、どの大手企業もやっていなかったビジネスモデルを組むことで、タイムリーに魅力的な価格で研究用抗体を提供することに成功する。PharMingenは短期間で世界中の研究者に認知され、製品化の開発スピード、製品性能から信頼されるブランドに成長することになる。

Herzenbergの研究室はもちろん、多くの日本の免疫研究室からも抗体のライセンスを受けて販売するシステムを確立した。しかし、80年代後半当時はまだインターネットも普及していない時代。いかにして、優れた抗体を世界中から集めるのかは大きな課題だった。「僕らは免疫に関係した論文をたくさん読んで優れた抗体を持っている研究者を探して、FAXと手紙を駆使して連絡をとにかくたくさん取っていたんだ」と楽しそうに振り返る。この地道な姿勢も、もちろんBioLegendにしっかりと受け継がれている。

 

再出発と拡大

PharMingenのビジネスは成功を納め、世界におけるマウスの抗体での地位は盤石なものとなっていった。そんな中、ベンチャー企業の宿命が彼を襲うことになる。1997年にヒトの抗体に強みを持っていたBecton, Dickinson and CompanyにPharMingenが買収された。買収後もしばらく籍を置いていたLay氏を、研究者が望むバリューで製品を提供できているかという疑問が動かした。2002年サンディエゴに、数人のメンバーとともにBioLegendを設立し、再度の起業に踏み切る。

BioLegendの哲学は、お客様に価値を提供することで企業も共に成長することだと誇る。そのために、熟練したメンバーによる優れた抗体作製技術、自社生産による抗体作製プロセスのコストダウン、PhD取得者による丁寧なサポート、迅速なロジスティクスを確立してきた。さらに、常に論文などで最先端を行くコラボレーターを探し続けている。相手が見つかれば、すぐにE-mailや電話でコンタクトをとる。今や世界中の著名なコラボレーターは100研究室を超えた。同社の1万を超える抗体製品のうち、約20%は日本の研究者が占め、その数も増えているそうだ。先端を行く技術・最高のサポート・適正な価格という最高のバランスで製品を提供し続ける挑戦は企業文化となり、2010年での製品の引用件数が3,000件を超えるという形で信頼の大きさへとつながっている。

 

日本の研究を活性化しさらなる高みへ挑戦する

世界中にいい抗体を広めたいという考えは、日本の研究者に特に強く向けられている。世界でもトップレベルの研究成果を出す日本の研究者を心より尊敬するLay氏が懸念することがある。日本の抗体販売価格が米国、ヨーロッパに比べて高いために、抗体入手に多くの予算を割き、研究予算を有効に活用できていないのではないかということだ。

もしアメリカと同程度の価格で研究用抗体が提供できれば、日本でもアメリカの研究者と同じくらい盛んに研究が進められるというのがLay氏の持論。日本の研究が活性化し、より多くの抗体が生まれ、それをBioLegendが世界に広めるという共存共栄。それを目指して、日本の販売窓口であるトミーデジタルバイオロジー社とより適切な価格で広めるための挑戦が今日も続く。

「日本では安いものは質が良くないという印象を持たれるようですが、我々は安くて優れている抗体を作ることで研究者に貢献することを誇りとしています。このことをもっと多くの人に知ってもらえたらうれしいですね」。これまでの彼の歩みはこの言葉が嘘ではないことを教えてくれる。

「バイオサイエンス研究分野に価値を提供することで伝説をつくる」というBioLegendのさらなる挑戦と発展は、研究現場をより活性化してくれるに違いない。

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Gene Lay 氏
University of Louisiana, M.S. 1988
PharMingen, Co-founder, Senior VP of Operations 1988-1997 BD Bioscience, VP Operations 1997-2002
BioLegend, Founder, Chairman, President and CEO 2002-現在

トミーデジタルバイオロジー株式会社
[所在地]東京都台東区池之端2-9-1「EDGEビル」
[TEL]03-5834-0810
[URL]http://www.digital-biology.co.jp/allianced/

●本記事、在庫、価格、製品仕様に関するお問い合わせ
http://www.digital-biology.co.jp/allianced/products/biolegend/
[TEL]03-5834-0843
[BioLegend社HP]http://www.biolegend.com