豊橋技術科学大学 エコロジー工学系 持続社会コーディネーターRコース
豊橋技術科学大学 エコロジー工学系 持続社会コーディネーターRコース
様々な製品・サービスが生産される中で、複雑な要素が絡み合って生じる環境問題。対処すべき課題はエネルギーから化学物質、廃棄物、環境管理等まで複雑かつ多岐に渡る。持続可能な社会の構築に向けた人材育成の取り組みが、豊橋技術科学大学で始まった。
CO2排出量の算出による環境評価
複雑化した環境問題を定量的に評価するためには、製品の製造や廃棄など、個々の工程とその総合的な影響を評価することが不可欠である。そのような状況に対応するのが、ライフサイクルアセスメント(LCA)という研究手法だ。LCAは、製品の製造から廃棄まで、すべての活動における、二酸化炭素をはじめとした環境に影響を与えうる物質の排出量を算出する。たとえば新しい製品を開発する際、原材料や製品の製造プロセス、輸送方法、リサイクル方法などは個別に決定され、それぞれで発生する二酸化炭素量は異なる。個々のプロセスでの排出量とトータルでの排出量を総合的に導き出すことで、二酸化炭素の排出抑制に向けた具体的な改善点を見つけることが可能になるのだ。近年、環境への意識の高まりから、二酸化炭素の排出量が少ない製品に価値が認められるようになり、企業や地方自治体でも、LCAの導入が検討されているという。
持続可能社会の実現に向けた技術者育成
豊橋技術科学大学エコロジー工学系では、生物学、物質科学、電気・電子工学などを複合的に学び、人間活動と環境生態系の調和を目指した先端科学技術・システムの開発と人材の育成を推進する。その中でもひと際注目を受ける持続社会コーディネーターRコースでは、科学的観点に基づいた環境評価を行い、その成果を社会に発信することで、持続社会の実現へ向けた取り組みを実践できる人材の育成を推進する。カリキュラムはLCA等の環境評価に加え、社会との対話に必要な科学コミュニケーション、ISO14001のような環境マネジメントなど、実践的な内容を提供している。同大学院のエコロジー工学系を専攻する40名の学生のうち20名が同コースに参加しており、学生側の期待度も高い。
実践の中で学ぶ
地域に貢献する実践的な技術者育成を目指す同プログラムの活動は学内だけに留まらず、積極的に地域と関わる機会を提供する。昨年10月には、LCAを研究テーマとする修士1年の学生が島根県にある離島「海士町」を研究フィールドに、環境評価により同町の特産品である隠岐牛の高付加価値化を目指した研究を開始した。現地に行くことで、研究室では見えなかった現場のニーズに気付くことも多いという。
地域課題を解決するコーディネーターとして活躍できる技術者を育成しようという取り組みは始まったばかり。しかしながら、確実にその芽は育っている。