SF世界の実現は、それぞれの願いの実現につながる

鈴木 孝洋 さん
株式会社シグレイ 代表取締役/
産業技術総合研究所 バイオメディカル研究部門 招聘研究員

株式会社シグレイの無機質なデザインのweb ページには、熱を帯びた刺激的な言葉が並
ぶ。そこには代表の鈴木孝洋さんが、SF 世界の実現を夢見て会社を立ち上げた想いが書き込まれている。立ち上げのきっかけは「寿司食わせろ!」という子どもの一言から。一見SF の世界とはそぐわないその言葉は、鈴木さんの使命感を造形した重要な言葉だった。

草薙素子に恋をして

鈴木さんが高校時代からのめり込み、その後の人生に大きい影響を与えた作品がある。士郎正宗原作の「攻殻機動隊」だ。マイクロマシンを使用して脳神経にデバイスを直接接続する電脳化技術やサイボーグ技術が発達した未来。主人公の草薙素子と、体の一部を人工物に置換したサイボーグ、人間を模した機械であるアンドロイドとの戦いを描き、読者に「人間の人間たる所以はなにか」という問いを突きつけてくる。「この世界を自分が生きている間に実現したい」。鈴木さんは機械と生物が奇妙に絡み合った、ドライだがウェットな世界に憧れ、大学の情報系学部を経てSE になった。

現実でできないことを

バーチャルの世界でSF 世界の実現。その思いをさらに強くする出来事があった。それが冒頭の「寿司食わせろ」のエピソードだ。鈴木さんの身近で、強烈なアレルギーを持った子どもが、寿司を食べたいという願いを遂げられず、幼い死を遂げた。「現実では実現できないこともある。だからバーチャルな世界で実現させてあげたいと思った」。舌で味わわなくても、脳で味わえる。そんな世界を実現するため、3 年の会社員生活でお金を貯めて大学院に戻った。修士課程では人工知能には人間と同じように身体が必要なのかという問いを、仮想空間で検証した。その中で生物の研究をする必要性に気づいた。「人工知能のアルゴリズムは、生物を知ることでリアリティを増す」という持論を確かめるため、博士課程では生物の研究で博士号を取得した。

SF 世界の実現は、それぞれの願いの

実現につながる株式会社シグレイの無機質なデザインのweb ページには、熱を帯びた刺激的な言葉が並ぶ。そこには代表の鈴木孝洋さんが、SF 世界の実現を夢見て会社を立ちあげた想いが書き込まれている。立ち上げのきっかけは「寿司食わせろ!」という子どもの一言から。一見SF の世界とはそぐわないその言葉は、鈴木さんの使命感を造形した重要な言葉だった。SF 世界を実現するために「自分で研究を進めるだけでなく、他の研究者の技術を実用化する支援もしていったほうが、SF 世界の実現は早い」。インターンシップの期間に何十件と回った大学の研究室に、事業化されず世に出ていない技術がゴロゴロと眠っていることに気がついて、鈴木さんはそう思った。2013 年1 月、事業化されていない技術を大学から見つけ出し、事業化をサポートする会社を立ち上げた。製品はまだ世
に出ていないが、多くの研究者と出会い、次々とプロジェクトが立ち上がっている。「強い願いを実現する。そのヒントはSFが現実となった未来にあるのです」。