【特集】ひとりひとりの遺伝子情報に応じた治療法の実現を目指す 株式会社サインポスト
遺伝子診断サービスを国内で初期の頃から手がける株式会社サインポスト。同社は医療機関を受診希望者との窓口の中心に据え、診断後の運動や栄養の摂り方について個人にあったプログラムを提案するユニークなサービスを提供してきた。同社代表取締役山崎義光氏にお話を伺った。
医師の連携でデータを蓄積
遺伝子診断事業を展開していく上で、診断のもとになるデータベースをいかに構築するかは重要である。「動脈硬化や心筋梗塞に関係する遺伝子多型の解析では、多くの医師や患者様のご協力を得ることができ、会社を設立して間もない時期に5か月程度で4,000件近い症例を得ることができました」と振り返る。全国の病院と医師どうしのネットワークで繋がれたことがデータベース構築を推し進めた。2002年から行った滋賀医科大学教授の柏木厚典氏、順天堂大学医学部教授の河盛隆造氏らとの研究では、2,000例以上の糖尿病患者の約100種類のSNPを検討。この中で動脈硬化、心筋梗塞、腎症、網膜症を引き起こすと思われていた候補遺伝子の遺伝子多型どうしが相乗効果で疾患のリスクを高めることを見いだす。さらに、2005年に発足させた「糖尿病オーダーメイド医療研究会(OMRFIT STUDY)」では3,898症例のデータを得ることができ、あわせて6,000件近いデータベースを築き上げる。
動機づけをする遺伝子診断
2004年に起業し、医療機関を通じて糖尿病合併症の個別リスク判定を展開し始めたのが2006年。ここでは、それまでの成果であるデータベースが活用されている。当初はリスク判定のみで展開していた事業だが、2008年に大阪市の健康・予防医療リーディングプロジェクトの一環として、運動&栄養プログラムを開発したことで、予防により力を入れた事業を手がけることになる。同プログラムの中では、受診者に結果を公表する際に肥満(脂肪燃焼低下)、高血圧、血栓、動脈硬化など生活習慣にともなって発症することが多い12の疾患について遺伝子リスクを4段階で報告される。リスクが高いと出た項目については遺伝子情報とともに、推奨される生活習慣、栄養に関するアドバイスが併記されており、結果を見た受診者がどう行動すればいいかの次のステップが示されている1)。実際に検診のオプションとして提供する病院もあり、予防医療のひとつのあり方を提示しているといえるのではないだろうか。
すでに125の病院、クリニックが同社の遺伝子診断事業の提供機関として窓口を開いている。蓄積したデータをもとに生活習慣病の治療のための薬剤選択も実施していきたいという山崎氏の展望が形になれば、同社が目指すオーダーメイド医療の普及と健康づくりが一歩近づくことだろう。
サインポスト株式会社 http://www.signpostcorp.com/
1) 情報は同社HPで閲覧可能(http://www.signpostcorp.com/user_data/spex_result.php)