【特集】日本初のゲノムビジネスへの挑戦 株式会社ジーンクエスト
企業の個人向けのDTCサービスへの新規参入がメディアで多く取り上げられる一方で、23andMeのように大規模に遺伝子を解析するサービスは日本ではまだ現れていなかった。そこに挑戦するベンチャーがついに現れた。その名は株式会社ジーンクエスト。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程に在籍中で、代表を務める高橋祥子氏は新たな挑戦に情熱を燃やす。
株式会社ジーンクエストも登壇!第1回BioGARAGEセミナー「ゲノムビジネスの最前線」
ジークエストのゲノムビジネス参入に関する記者会見も同日開催
将来の生活に活かされる情報
ゲノム解析技術が進歩したことで、望む、望まざるに関わらず、個人のゲノム情報を容易に手に入れられるパーソナルゲノムの時代が日本にも到来している。こう実感する高橋氏は自分でも23andMeの遺伝子解析を受けた経験を持つ。将来アルコールによる食道がんのリスクが高いという解析結果を受け、お酒の席にはよくでるが一度に摂るアルコールの量を抑えるようになったという。生活習慣に関係したリスクであれば事前に知ることで、普段の行動の改善に繋がる。自分のゲノム情報を知ることで将来の生活をより豊かなものにする。高橋氏が同社の活動を通して実現したいことのひとつだ。
250,000+5,000、そして1万人
あなたは肥満のリスクが低いです。あなたの目の色は青色を基準とした時に茶色の傾向があります。23andMeのサービスで出てきた結果はいずれも欧米人向けに作られたもので、日本人の高橋氏にとっては最適といえる情報ではなかった。日本人にあった解析プラットフォームを立ち上げて、実践できないか。その想いが形になった。技術顧問と協力して日本人向けに設計された同社のアレイは、250,000SNPsに日本人特有の5,000SNPsを加えた独自の仕様。このアレイを使ったサービスが2014年1月、ついに始動する。「日本では100万人のゲノム調査が提案されています。それに先立って私どもはまず1万人のゲノムを解析します」。23andMeではすでにパーキンソン病の研究プロジェクトなど独自のプログラムが走り出している。1万人の結果から日本の医療に貢献しうる疾患研究の芽を見いだすことができるか、これからに期待が集まる。
遺伝子解析の未来を広げる
一方で国内のゲノムビジネスが危うい状況にあることも認識している。遺伝子関連のビジネスをやっていなかった企業も遺伝子検査ビジネスに参入しつつある今、一般市民にとってポジティブな方向に傾くか、リスクが先行しネガティブな方向に傾くかはこの数年で決まると高橋氏はみている。
「国内外のゲノムビジネスを行う企業は、決して誤解を与えたり必要以上に恐怖を煽るものではなく、今ある正しい情報を正確に一般の方々に伝えていく責任があります。誤った情報が広まると規制がなされて、結局はゲノム情報の恩恵を受けられない社会になってしまう、私たちが今挑戦しなくてはいけません」。この純粋な情熱に呼応してゲノム研究に通じた経営者、大学教授陣を含めた技術顧問、社員、倫理委員会は集まった。ゲノム情報の提供を通じて人々に豊かな生活を促すジーンクエストの本当の挑戦がこれから始まる。
株式会社ジーンクエスト Webサイト(取材依頼はこちらから)
http://genequest.jp
株式会社ジーンクエストが朝日新聞デジタルに取り上げられました。(2013年11月30日)