高速のスフェロイド形態計測が 再生医療、創薬研究を加速する from 「BIO GARAGE」vol.22
幹細胞、そして癌細胞の培養において、三次元細胞培養は非常に重要なツールとなりうる。その際、幹細胞の品質や薬剤の影響の1stスクリーニングの指標として有用なのが、スフェロイドの数とサイズだ。大日本スクリーン製造株式会社の高速3D細胞スキャナーCell3 iMagerは、わずか1.5分で96ウェルプレートのスキャンから計測まで行える、スフェロイドのアッセイをハイスループット化するための強力なツールだ。
10月17日にBioJapan(パシフィコ横浜)ランチョンセミナー「3次元培養の優位性とイメージング・アッセイの可能性」が開催されます。
スフェロイドの形態で細胞を評価する
幹細胞の品質や、薬剤の影響を評価する際、RNAの発現量を調べたり、検査試薬を加えたりするような方法では、試験に手間を要する上に、評価に使用した細胞はロスしてしまうことになる。Cell3 iMagerでスフェロイド(多能性幹細胞の場合、胚様体embryoid bodyとも呼ばれる)のサイズや形態を自動計測することで、それを高速、簡便化できるはずだ。
例えばヒトES細胞を用いて様々なサイズの胚様体を培養し、多能性の指標としてOct4、内胚葉への分化傾向としてGata6、神経への分化傾向としてPax6の発現を測定した研究がある1)。この研究では、胚様体の直径が100μmを下回るようなサイズの場合は内胚葉への分化傾向が、300μmを超えるようなサイズになると神経への分化傾向が高まることが示された。
高速計測でハイスループット化に寄与する
高速3D細胞スキャナーという名の通り、Cell3 iMagerの強みは、高速なスキャンと、明視野での高解像度イメージングシステムだ。初回の計測時には、1プレートを撮像した後にレシピ作成を行う必要があるため20分程度かかるが、いったんレシピが決まれば、約54秒でスキャンした後に約20秒で計測を行うという高速処理が可能なのだ(図3)。また、あえて蛍光観察機能を排し、明視野で最大分解能約2.6μmの高解像度観察を可能としている(図4)。これにより、ATPアッセイや免疫染色等による蛍光像をアッセイ指標とする代わりに、高精度の面積測定と、コントラストを元にした擬似体積測定を行うことで、細胞に余計な刺激やダメージを与えることなく、継続的に観察し続けることができる。スフェロイドの大きさと数のヒストグラムを出力できるので、培養条件によってどのように成長が変化するのかを簡単に比較することも可能だ。各社から発売されている種々の三次元培養プレートに対応しているのも強みのひとつといえるだろう(表2)。
Cell3 iMagerを活用することで、幹細胞の研究では、例えば一定サイズのスフェロイドのみを選別する工程を自動化する、細胞の初期化と増殖の効率を上げる因子の探索を網羅的に行う、といった用途に利用できるだろう。癌細胞の研究では、候補物質の投与による形状変化をアッセイすることで、新規抗癌剤のハイスループットスクリーニングに使えるはずだ。ケミカルバイオロジーや創薬、また幹細胞の応用を志す研究にとって、実験の効率を飛躍的に向上させる推進力となるに違いない。
1) Bauwens CL. et al. Control of Human Embryonic Stem Cell Colony and Aggregate Size Heterogeneity Influences Differentiation Trajectories.
Stem Cells (2008), 26(9), 2300-2310
●大日本スクリーン製造株式会社
G10 画像処理応用事業部 営業・マーケティング部
(2014 年10 月1 日より株式会社SCREEN ホールディングス 事業開発室)
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