特集:あなたの一歩で世界はこう変わる

特集:あなたの一歩で世界はこう変わる

研究者なら多くの人が憧れる企業の研究所での仕事。今どんな人材が求められているのだろう。それを知る機会は今、就職活動や大学内の共同研究にとどまらなくなってきている。企業研究で大事な視点とはなにか。即戦力となるために、学生の間に何ができるのか。
これは、就職活動を間近に控えたある大学院生Bくんと研究室の先輩のAさんの会話だ。

■企業情報の洪水から、B君は何を見出すのか
A「B君、何やっているの?」
B「明日、初めて会社の説明会に行くので、その企業のHPを調べているんです。」
A「B君もいよいよ就職活動を始めるんだね。将来はどんな仕事をしたいの?」
B「やっぱり企業の研究者になって世の中に役立つものを研究で届けていきたいんです!でも、自分のやってきたテーマと合う企業があるのかは、正直わからなくて・・・」
A「大学院でやってきたテーマをそのまま活かしたいんだね。」
B「せっかく大学院まで進んでやってきたテーマですから、活かせたらいいなと。」
A「でも、テーマだけで選んでいくと、なかなか難しいかもしれないよ。」
B「どうしてですか?」
A「そのテーマは5年後、本当に企業が続けていけるテーマかわからないよね。もちろん何をやっているかを知っておくことはとても大事だけど、企業は時代に合わせて変化しているから、A君が入る頃に今見ている事業が続いているかはわからない。どんな企業に身を置くべきかについて考えるには、他にも大事なことを知っていなくては。」
B「正直、たくさんの企業があって、たくさんの研究をしているから、何が自分にあっているのか、どんな企業だったら自分を受け入れてくれそうなのか、全然まだ見当がつかないです。」
A「僕も君も研究一筋で研究室からほとんど出ない生活だったからな〜。社会で何が起こっているか、知らないのは無理もない。どんな人が求められているかは、今企業が置かれた現状を見るといいよ」 584

■イノベーションってなんだ?
A「今、多くの企業が最も求めているのは一言でいってしまうと『イノベーションを起こせるような人材』だ。」
B「イノベーションって良く聞きますけど、わかるようなわからない言葉ですね。」
A「1つの定義としては、技術やサービスで世の中の生活をこれまでとガラっと変えるような革新的なできごとのことを指しているよ。」
B「スマートフォンをつくったことがそうですね。みんながインターネットと電話を手の中でできるようになったし、今はPCを持ち歩かなくてもだいたいのことができてしまいますよね。」
A「そう。でも今はイノベーションを起こすのが難しい時代と言われているんだ。 情報通信が発達して、ものすごいスピードで世の中が変わっていくだろう?1つ便利になったことはすぐに普及して、それが当たり前の世界になる。じゃあ次はなんだろう?開発する側は常に次の革新的な製品を考え続けないといけないね。それに多様なニーズに対応しなくちゃいけない。ただ機能が優れているだけではだめで、機能と市場の組み合わせで、ニッチなニーズに対応するところから、世の中を変える製品が生まれたりするんだ。」
B「イノベーションって技術をコツコツ高めていくだけじゃなくて、発想力も、社会を見る力も、難しい課題を解決していく力も、いろんな力が必要で難しそうですね。。。僕に研究開発の仕事が務まるのかな、心配になってきた。」
A「それが、そうでもないんだ。研究をしっかりやってきた者ほど、活躍できる場所はたくさんあるんだよ。」628

■今こそ研究者の出番だ!
A「研究者に今もっとも期待されている役割、それは課題を設計する、ミッションの提示者としての役割だ。世の中が多様化し、無数の問題がある中で、実は課題を発見し、適切なテーマにすることそのものが、簡単ではない。だけど、君もやっているように、研究者は多くの情報の中から自分のテーマを見つけ、実現可能な計画をたて、汗水流してそれを粘り強く実行しているだろう?その力は、実は非常に社会で求められる力なんだよ。」
B「そうなんだ!今の研究にかける使命感と実行力だったら誰にも負けませんよ!先輩がテーマだけが大事じゃないって言っていた意味がわかりました。研究経験そのものが、僕の武器になるってことですね。その武器をどんな分野で活かせるのかを探せばいいんだ。でも、企業が考えている未来を知るにはどうしたらいいんだろう。」
A「もう1つ知っておくといいことがある。今は多くの企業が外部の研究者と一緒に双方のアイデアや資源を活用することで新しい価値を生み出すことを目指しているんだ。」
B「聞いたことがあります。オープン・イノベーションってやつですね。」
A「これまで閉じられた世界で研究をしていた者どうしが、お互いの知恵を出しあい、協力しあって同じテーマに向かっていこう、という取り組みだ。これまで組織の中で隠されてきた企業の持っている情報を開示して、それを活用してもらおう、なんて取り組みもある。企業が出す研究費のテーマなんかは、企業が何年後かの未来を見据えて募集しているテーマだったりする。そういう、就職活動以外の場面で研究の面で企業と接点を持てる機会は、今増えているんだ。」
B「へえ、そんな機会があるなら、チャレンジしてみたいな。企業のことももっとわかりそうだし。」
A「じゃあ、いくつかの取り組みを紹介するよ」

研究者の持つ課題発見能力や高い専門性が必要な社会がやってきた。新しい価値を生む研究を加速するために、研究者も、企業も未来に迎えるパートナーを探す。就職活動でも共同研究でも、その大きな目的は同じだ。AさんとB君と一緒に、オープンマインドを持って未来をつくる企業と研究者の新しい取り組みを見ていこう。

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