〔リバネスセンシズ〕距離を越えて研究の「熱」を伝えるひと(後編)

〔リバネスセンシズ〕距離を越えて研究の「熱」を伝えるひと(後編)

リバネセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。

立花 智子(たちばな さとこ)

修士(生命科学)
専門分野:微細藻類の分類、培養

(聴き手:佐野 卓郎)

リバネスに入社し、研究の魅力を伝える仕事を始めた立花さんに、2011年、大きな転機が訪れる。東日本大震災から、彼女の視野は地域に、そして地域をつないでいくことに広がっていく。2011年以降の立花さんの変化について聞いてみた。

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佐野:2011年震災後、被災地にかなり思いを馳せていたようですが。

立花:親族が東北にいたんです。インターネットで親族の情報を探したりしてました。
その後、リバネスの仲間が被災地のための活動を認めてくれたんです。それが、陸前高田での「大実験教室展」開催という形に現れました。小学校をかり切って、リバネスのみんなで色んな実験教室を行いました。
その後は、協和発酵キリン株式会社とともに「東北バイオ教育プロジェクト」を実施したり、川崎重工業株式会社が行う東北での次世代教育支援活動のプログラム実施をするなど、大手企業の皆様とも被災地でのプロジェクトをご一緒することができました。本当にありがたく、嬉しく思いました。

佐野:被災地支援の教育から何を学びました?

立花:色々と自分に変化がありましたが、まとめて話すのはむずかしいですね。
ひとつ話すとしたら、東北バイオ教育プロジェクトに参加した岩手県陸前高田市にある高田高校です。まったく研究の経験がない高校生が、傷ついてしまった地元のために何かをしたいという想いを胸に、研究するというチャレンジでした。約60カ所からサンプリングし、100以上の藻類をスクリーニングして、最終的には油を蓄積する藻類を発見することができました。これを増やせば、地元でエネルギーの自給ができるのではと考えたのです。もちろん実現までの道のりは長いですが、それ以上に皆の想いが研究成果という形になる瞬間に居合わせることができたことが、貴重な経験となりました。

佐野:現在は、どんなプロジェクトを仕掛けていますか?

立花:高田高校の経験から、地方で研究活動をする高校生をもっと増やすことができると確信しました。ただ、そのための仕組みがなかった。時間的にも費用的にも、事業所のある地域に以外にはなかなか足をのばせない。
そこで現在私は、全国の中高校生研究者のメンタリングを行う仕組みを構築しています。リバネスには「サイエンスキャッスル研究費」という中高校生のための研究費を出していますが、お金だけあっても仕方ないと思われるケースも多々あります。
どのように研究を進めていくべきか、採択者のメンタリングをインターネットを通じて、遠隔で行う取り組みを2016年から始めています。
この仕組みで重要なのは、メンタリングをする研究者の存在です。リバネス社員だけでなく外部の研究者も巻き込みながら、メンターの育成手法を編み出しつつ、その効果検証もしています。
私がこの取組で、とくに気をつけているのが、中高生に「ただお金を配って終わり」にしないようにすることです。中高生の多様な興味関心を伸ばして、研究成果をあげていくためには、多様なおとなの研究者とのコミュニケーションが欠かせないと考えています。そのため、インターネットのテレビ電話機能をつかった、face to faceのメンタリングを重要視しています。
リバネスには、高校卒業後もずっと研究者を支援し、一緒に事を仕掛けていくプラットフォームがありますので、ここで出会った中高生たちとは、ずっと付き合っていくつもりです。

地域と世代を越えてつながる中高校生研究者たちは、きっと個性的でワクワクする日々を過ごせることと思います。

地域を跨いでつながる研究者・中高生そして先生は、単に情報の授受をするだけでなく、お互いのもつ「熱」を交換し合うことができる。こうした有機的なしくみこそ、立花さんが目指すひとつの教育のカタチなのかもしれない。

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