見えない粒子を制御した 2人の研究者にノーベル物理学賞!

見えない粒子を制御した 2人の研究者にノーベル物理学賞!

ノーベル文学賞2012さあ、調べ物をしようと意気込んでパソコンをクリック。
「んー、このパソコン遅いな」とイライラとしたことはありませんか?もっと性能の良いコンピューターがあれば・・・。

Photo: © CNRS Photothèque/Christophe Lebedinsky Serge Haroche

Photo: © CNRS Photothèque/Christophe Lebedinsky Serge Haroche

Photo: © NIST David J. Wineland
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David J. Wineland

今回のノーベル物理学賞は、現在のパソコンでは考えられないほどの速い処理能力をもつ「量子コンピューター」を作り出せる可能性を示したワインランド氏とアロシュ氏が受賞しました。

この量子という言葉、聞きなれないようですが、化学の授業で学ぶ陽子や中性子,電子など、私たちの世界を作る分子(物質)や光子(光)を指します。
量子1つを単離してその動きを捉えることは大変難しく、ましてや制御することはこれまで不可能でした。
2人は単一量子を制御するという同じ目的で研究し、それぞれ異なる方法で可能にしたのです。

アロシュ氏は光の粒子(光子)を超伝導体の穴に閉じ込めて制御したのに対して、ワインランド氏は、電荷をもつ原子(イオン)を電場の中に閉じ込めてレーザーの光(光子)で制御しました。
私たちの生活には関係のなさそうな技術に見えますが、実はこれが、パソコンの性能を飛躍的に伸ばすことにつながります。

現在のパソコンは情報を2進法で扱い、「0」と「1」で表現します。
この場合は、一度に1つの情報しか扱うことができません。
例えば「1+1」を計算し、答えの「2」を算出しています。

しかし、量子コンピューターを用いる場合は、一度に複数の情報を扱うことができるのです。
予測不可能な単一量子の状態を制御することで、例えば「1+1」の暗算をするときには同時に「1-1」の計算も行い、「2」と「0」の両方の答えを得てから正しい答えである「2」を示します。
つまり、N個の量子を使えば2N個の数を同時に扱うことが可能になるのです。

単一量子で同時に2つの情報を扱うということが確実に制御可能になれば、一度に扱うことのできる情報量は明らかに増加します。
私たちが量子コンピューターを手にするのはまだ先かも知れません。
しかし、ミクロな量子の状態や動きを制御できるとマクロな私たちの世界がさらに広がるのです。

ライター 野村真未