『教育応援VOL. 18』リケジョのすすめ ~MITに恋して~
東京大学大学院情報学環・生産技術研究所 大島まり教授
強い憧れに突き動かされる女性のパワーは計り知れません。星を見るのが好きだった幼少の頃、アポロの月面着陸に感動した大島まり先生は、「この技術を支えているのは、MIT(マサチューセッツ工科大学)の技術者たちなんだよ」との父親の言葉で、MITへの憧れを抱くようになります。憧れ続けたMITへの留学を実現した大島先生は、今では世界をリードする女性研究者の一人として、女子生徒の理系進学を応援しています。
人類を支える科学技術への興味
1969年のアポロの月面着陸を支えたのは、MITで開発された「アポロ誘導コンピュータ」と呼ばれるもので、後のコンピュータの発展にも大きく貢献するもので
した。人々を驚かせるような科学技術を生み出すMITに憧れ、またオイルショックなどで社会問題となっていた「エネルギー」について学びたいと、大学の卒業研究で「核融合」の研究に取り組んでいました。最初のテーマは、複雑な計算を要する熱流体(熱量をもつ液体や気体)のコンピュータシミュレーション。「核融合のように、実験できないことを計算で予測する」というシミュレーションの可能性に魅せられ、その分野でも一流の研究者が集まる憧れのMITへの留学を実現させたのです。
熱流体から、血流の研究者へ
MITでは改めて物理や数学の基礎から鍛えられ、いつしか研究者として生きることを志すようになった大島先生。これまでの流体力学では比較的新しい手法である、シミュレーションを使った技術を役立てる道を模索しはじめました。博士号取得後、スタンフォード大学で研究していた時、それまでと異なる「血流のシミュレーション」というテーマに出会いました。「チャレンジングでしたが、流体力学の基礎はあらゆる流体の研究に応用できると考えました」。最新医療技術であるCTやMRIなどでも、画像として見られる血流は体の一部だけ。大島先生は、そこにシミュレーションを組み合わせることで、脳循環を含めた全身の影響を考慮した血流のシミュレーションに日本で初めて成功しました。これにより、病気の原因や進行のメカニズムを探ることに大きく貢献していると考えられます。
研究職は女性向き!?
「研究職は女性に向いているかもしれませんね」と言う大島先生。大学では研究室に入る前から英会話サークルに入り、密かに留学の準備を進めていたと言います。「憧れや目標に向かってコツコツ努力するのは女性のほうが得意かもしれません」。また、女性には出産・育児という大きなライフイベントがあります。特に個人に成果が求められる研究職では、ある時は短期集中して、また、ある時は長期的な視点にたって計画を立てるなど、ある程度の柔軟性を持って生活や研究スタイルを変更することが可能です。理系をめざす女性を応援したい!と様々なところで講演をしている大島先生に実際に会って、その情熱に触れてみませんか。