個人差を診て、健康のための運動プランをつくる 家光 素行

個人差を診て、健康のための運動プランをつくる 家光 素行

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スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学科 家光素行 准教授

病気になる前の予防医療として,健康診断や予防接種などが行われています。しかし,近い将来には,あなたの遺伝子や生活習慣から,どんな運動がどのくらい必要か書かれたあなた専用の「オーダーメイド予防運動プラン」が渡されるようになるかもしれません。

家光先生

硬くなった血管をやわらかくする「運動」の力

血管は,成人男性で10万km,地球を2回りできてしまうほどの長さがあり,1分間に8Lもの血液を送り出しているといわれています。しかし,この重要な血管は,老化に伴<ともな> い,どんどん硬くなっていきます。「動脈硬化」といわれるこの症状には,特に自覚症状がありませんが,放っておくと脳梗塞や心筋梗塞など死に至る病気へつながる場合もあります。
そんな動脈硬化の症状を,なんと運動によって少しずつ改善することができます。「運動は病気一歩手前の人たちを健康に近づけることができる万能薬」と語る家光先生は,その恩恵をすべての人に届けようとしています。

遺伝子の違いから運動効果を予測する

では,運動の恩恵には,どのような個人差があるのでしょうか。先生はまず,高齢者が1日40分の自転車トレーニングを週3回,8週間続けることで,血管がどのくらい柔軟性を取り戻すか分析しました。すると筋肉の付き方や体重の落ち方などと同じように,変化が現れる時期や度合いに個人差が見られました。
さらに,100種類以上の動脈硬化にかかわる遺伝子の中から10種類について調べたところ,5~7種類では遺伝子の差と運動効果の個人差との間に関係性が見つかったのです。つまり,これらの遺伝子を事前に調べておけば,あなたがどの程度の運動をどのくらいの期間行えば,効果が出るかという予測に一歩近づくのです。そして,運動効果が現れにくい人は,その分を食事など他の生活習慣の改善で補<おぎな> うことですべての人が病気の予防をすることが可能になるかもしれません。

みんなが自分に適した運動を

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ひとりひとり違う私たちが,等しく運動の恩恵を受けるために,研究しなければいけないことはたくさんあります。人の全遺伝情報のうち0.1%,約300万か所に個人差があるといわれていますが,先生は,その3分の1にあたる100万か所を調べることで,より正確に個人差を理解しようとしています。
「すべての人に健康になってもらうこと」が先生のゴールです。生活習慣からくる病気がまん延するこの社会で,自分だけでなく,両親やおじいちゃん,おばあちゃん,みんなが自分に合った運動プランを持ち,笑顔で健康になれるよう,先生は日々運動効果のすごさとその効果の個人差を見つめています。

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