細胞増殖促進効果を有し、 アンチエイジングを実現するATP産生促進剤
「生体エネルギーの通貨」とよばれるATP の産生能が低下すると、増殖を含む細胞機能が低下し、老化や細胞死の促進につながります。このたび、筑波大学生命環境系の礒田博子教授、繁森英幸教授のグループでは、コーヒー豆やムラサキイモなどに多く含まれる抗酸化ポリフェノールであるカフェオイルキナ酸が、アミロイドβ毒素による神経細胞死を防ぎ、アルツハイマー病予防効果をもつことを見出しました。そして、そのメカニズム解析の結果、本成分が高いATP 産生促進効果を有することを発見しました。本成分は経口投与や経皮投与などで用いることができるため、エネルギー代謝促進作用やアンチエイジング効果を期待した医薬品、化粧品、健康食品・飲料など、幅広い展開が可能です。
■発明の概要
発明者は、ヒト細胞培養株を用いた実験において、カフェオイルキナ酸を添加することにより細胞増殖が促進されることを見出した。また、2個以上のカフェ酸がエステル結合した構造を有するカフェオイルキナ酸で、特に高い効果が見られることを明らかにしており、これを含有した細胞増殖促進剤の特許が認可されている(特許公開2010- 120908)。なお、3個のカフェ酸を有するトリカフェオイルキナ酸を添加する実験で、実際に細胞内でATP量が増加することを確認しており、さらに、これらの作用が、細胞内で嫌気的なATP合成反応を担う解糖系酵素タンパク質であるPhosphoglycerate kinase1(PGK1)、Glyceraldehyde-3-phospate dehydrogenase(G3PDH)の発現量増加によるものであることを示している。以上の結果より、この細胞増殖促進剤は、高いATP産生促進効果を有することが明らかになっている。
■発明の効果
・本発明に係る細胞増殖促進剤は、高いATP産生促進効果を有するため、細胞機能の活性化およびアンチエイジングを実現することが可能である。
・経口投与や経皮投与などで用いることができるため、医薬品、化粧品、健康食品・飲料など、幅広い展開が可能である。
・有効成分であるカフェオイルキナ酸は、食資源(コーヒー豆やムラサキイモなど)由来の化合物であるため、長期間、連続的に摂取しても安全である可能性が高い。
〔本特許に関するお問合せ先〕
筑波大学国際産学連携本部(産学連携課 産学交流係)
TEL:029-853-2906
FAX:029-853-6565
E-mail:[email protected]
取材協力:筑波大学北アフリカ研究センター(センター長:礒田博子教授)
バイオサイエンス分野、環境・エネルギー分野、人文社会科学分野、ICT・イノベーション分野の4分野について多分野融合型の新教育研究システムを確立し、「北アフリカイノベーション」の創出に向けた拠点形成に取り組んでいます。北アフリカ・地中海食薬資源機能性解析研究では、伝承的なリラックス効果など神経系に機能する食薬成分として、カフェ酸誘導体が多く見つかっています。このことからも礒田研究室では「カフェ酸誘導体の神経機能改善効果」に注目し、研究を進めています。
出展:『AgriGARAGE』07号、26ページ