中高生が研究する世界 「[特集] 中高生が研究に取り組む先に」より

中高生が研究する世界 「[特集] 中高生が研究に取り組む先に」より

[特集] 中高生が研究に取り組む先に

高校の新指導要領では「理科課題研究」が単位化され、多くの学校で実践されている中高生による課題研究。中高生が答えのない課題に挑戦する研究に取り組む現在の流れはここ十数年でとても活発になってきました。現在に至るまでに日本では何があったのか、そしてこれからの次世代育成は何を望まれているのでしょうか?

中高生の研究を推進する日本の動き

現在の日本では中高生の研究活動を推進するため、多額の予算を付けています。平成27年度の中高生向けの理数系人材輩出関連予算は約42億円に上ります。そもそも、理数系人材育成に予算を付ける動きが明確になったのは平成14年度のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)、サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)の開始です。この2つの取り組みにより、学校は理数教育に特別な予算を付けることができるようになりました。SSH指定校に選ばれると1校ごとに毎年1000〜2000万円ほどの予算が付き、本格的な理数教育を行うための機材購入や、講演の実施、発表会の運営などさまざまなことを行えます。SPPは予算こそ少ないものの多数の採択があり、研究者を学校に招聘した活動などが活発に行われるようになりました。
 SSHやSPPが始まった背景には、平成10年頃から叫ばれていた「学力低下」や「理数離れ」がありました。そのような中で平成13年度の中央省庁再編により、旧・文部省と旧・科学技術庁が統合され文部科学省が生まれます。「理数離れ」対策に関しては旧・科学技術庁系の部署が担当し、それまで文部省で組まれていた学校関係予算に比べて多額の予算が投入されるようになったのです。
 SSH、SPPを皮切りに理数系人材育成に向けてさまざまな予算が組まれるようになります。平成16年度には、国際科学技術コンテスト支援事業が始まり、平成21年度には女子中高生の理系進路選択支援プログラム、理数系教員養成拠点構築プログラムが始まりました。その後も、中高生の科学部活動振興プログラム、次世代科学者育成プログラム、グローバルサイエンスキャンパス、サイエンスリーダーズキャンプなど、次世代の理数系人材育成に向けたさまざまな取り組みが行われています。
 そして今年度、これまでのSPP、科学部活動振興プログラム、教員向けのプログラムを統合する形で、新たに中高生の科学研究実践活動推進プログラムが予算化されました。
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中高生の研究活動は世界につながる

中高生の研究活動は日本だけでなく、世界中で進んでいます。研究活動推進を目的とする世界大会も開催されています。その代表となるのがIntel ISEFとGoogle Science Fairの2大会です。Intel ISEFはIntelがメインスポンサーとなっている大会で1958年から開催されています。Google Science FairはGoogleが中心となり2011年から始まりました。いずれも優勝者には5万ドルの賞金(奨学金)が渡されます。さらに、Intel ISEFに関してはノーベル賞授与式への参加の副賞付きです。この2大会へは日本の学生も参加しています。2014年のIntel ISEFでは14組23名の高校生等が参加し、宮城県の高校3年生と富山県の高校3年生がそれぞれ2等賞を受賞しました。国際大会に参加すると、賞金が出るという魅力もありますが、それ以上に世界中の同年代の研究者と切磋琢磨できることが魅力です。学校で行っている課題研究のその先として、世界大会へ挑戦する流れもあるのです。

Intel ISEF

世界70の国と地域から生徒が参加する、半世紀以上続く伝統ある科学研究コンテスト

<対象学年>

grade 9 – 12

<最優秀者への賞金(奨学金)>

5万ドル+ノーベル賞授与式へ参加

<実施開始年>

1958年

<日本からの参加方法>

日本学生科学賞(JSSA)またはJSECのいずれかに参加し選抜される

<審査方法>

審査員との面談形式でポスター発表が行われる

Google Science Fair

13〜18歳の個人またはチームを対象とする国際的なオンラインコンテスト

<対象学年>

grade8 – 12

<最優秀者への賞金(奨学金)>

5万ドル

<実施開始年>

2011年

<日本からの参加方法>

Webからエントリー

<審査方法>

プロジェクトサイトの審査が行われ、優秀者がプレゼンテーションに進む

サイエンスキャッスルから見えてくる課題研究の現状

リバネスが実施している中高生のための学会「サイエンスキャッスル」においても、毎年多くの研究発表が寄せられようになっています。第一回のサイエンスキャッスルでは、関東・関西合わせて71件の発表数でしたが、昨年末に実施した第三回サイエンスキャッスルでは3倍以上の246件の発表が行われています。研究し、発表をする生徒が増えていることが分かります。一方で、本年度から始めた審査項目の中で「研究に背景、仮説、手法、結果、考察の流れがあるか?」という項目を満たしている発表はとても少ないという結果が見えてきました。研究の基本の流れはまだ中高生の課題研究に定着していないのかもしれません。現在の理数人材育成において課題研究が重視されている理由の1つとして、答えのない課題に対して生徒が自分で取り組めるようになるという目的に、研究体験によって近づくことができるという仮説にあります。その目的達成のためにも、研究の流れをうまく指導できる方法が今後より一層重要になると思われます。

中高生が研究する世界へ

日本は答えの無い課題に対して取り組める次世代の人材育成に向けて、「中高生の科学研究実践活動推進プログラム」の予算化に見られるように研究を中心とした教育活動の実施という方向に舵を切り始めました。文部科学省、大学はそれぞれどのように考えて取り組んでいるのかを次頁以降で紹介します。

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