〔リバネスセンシズ〕栽培研究王を目指すひと(後編)

〔リバネスセンシズ〕栽培研究王を目指すひと(後編)

リバネスセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。

宮内 陽介(みやうち ようすけ)
博士(農学)

専門分野:作物学

(聴き手:佐野 卓郎)

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佐野:入社してすぐにどんな仕事をしましたか?

宮内:「宇宙教育プロジェクト」で宇宙から帰還した全国各地の地大豆(各地域に残る特有な大豆)を、各地域の子供たちと栽培し研究するプロジェクトをやっていました。宇宙線が大豆種子に及ぼす影響を見ようというものです。
マメ科植物は痩せた土地でも育つ特徴がありますから、他の植物に比べて、宇宙でも育てやすいのではないかと考えられています。しかも大豆は栄養価が高い。宇宙で作物を育てたいならば、まず大豆から始めるべきでしょう。

佐野:大豆って多くの可能性を秘めているんですね。

宮内:マメ科植物が痩せた土地でも育つのは、その根っこに共生している根粒菌の働きによります。その仕組みや働きにはまだ未知の部分が多く、そこが解明できれば、もしかしたら他の作物にも応用できるかもしれません。マメ科植物への接ぎ木による作物の生産なども考えられるかもしれません。

佐野:最近、土の研究に関するプロジェクトも始めようとしていますよね?

宮内:土は植物が育つためにとても重要なものですからね。農業現場の課題を知り、土や田畑をどうつくるのかを研究するんです。そもそも土である必要があるのか。それがわかってくると、将来的には宇宙での農業を実現するに至るかもしれません。
農業に想いを持って取り組むベンチャー企業とともに、まさにこれからプロジェクトを進めていくところです。

佐野:宮内さんは、博士課程修了後のキャリアになぜ企業を選んだんですか?

宮内:農業に近い立場で学問を選んで、色々と研究をしてきました。実際にこうやれば収量が上がるとか、様々なデータを取り、手法を知ることもできました。それをぜひ農家さんに使ってもらいたい。でも農業現場に実装するのってとてもハードルが高いんです。大学で研究しているだけでは難しい気がして。企業の立場、産業の立場からアプローチしようと考えたんです。

佐野:入社時の全社プレゼンでは「大豆王になる!」って言っていましたよね?

宮内:今は「栽培研究王」を目指してます。栽培に関することであればなんでも研究していきたいと考えています。

佐野:栽培研究の今後について、考えを聞かせてください。

宮内:農業の研究者には今、地に足を付け地道な研究をしていこうとする人と、宇宙農業のような近未来的世界観で研究している人がいるように思います。従来の手法でデータを蓄積する研究もあれば、新技術を活用し新しい視点から研究を進めていく研究もあります。きっと、昔ながらのデータだけでなく、シークエンス技術などを組み合わせ、新しい視点から研究を進めていくことで、明らかになることも多くあるでしょう。しかし、農業研究において、こうした人や研究を組み合わせることは未だできていません。
植物は色々な要素で育ちますが、その要素が明確にはわかっていません。それがわかれば、効率的な生産ができるでしょうし、宇宙での生産も可能になるかもしれません。リバネスで様々な研究者や大企業・ベンチャーと出会い、また地域の農家の方たちとも一緒になって、立場を超えたチームを作りながら、栽培研究を進めていきたいと考えています。