〔リバネスセンシズ〕チームの力で薬を生み出すしくみを創造するひと(前編)
リバネスセンシズでは、リバネスメンバーのインタビューを通して、そのパッションを紐解き、実現しようとする個々の未来像をお伝えします。
濱口 真慈(はまぐち まちか)
博士(理学)
専門分野:神経科学、分子生物学
(聴き手:渡辺 桂子)
「薬がつくりたい」。この想いをもった研究者は多くいるに違いない。濱口 真慈(はまぐち まちか)さんもその一人だ。ただ、その夢を実現できるひとは少ない。特に難病の薬に挑むことは一筋縄ではいかないだろう。今回は、一人の力に限界を感じ、リバネスの可能性にかける濱口さんにインタビューしてみた。
渡辺:確か、濱口さんは大学院時代を大阪大学で過ごしましたよね?
濱口:そうですね。学部時代は兵庫県立大学でしたけど、修士と博士は大阪大学で学んでいました。
渡辺:出身はどちらですか?
濱口:石川県出身です。両親からは勉強しろとも言われずに、のびのびと育ちました。
渡辺:やはり、生き物とか自然とか、そういうのが好きだったのでしょうか?
濱口:実は、中高生の頃は、生物にあまり興味がなかったんです。授業でも生物は選択していませんでした。代わりに数学が好きでしたね。順番に、丁寧に考えていくと答えが導き出せる。そういうロジカルな感じが好きでした。
高校生になってから、どの大学に進学しようかと思い、あるときオープンキャンパスに行ってみたんです。そこで、生物の中で起こっている様々な現象とそのメカニズムについて興味を持ちました。ロジカルに考えれば、病気が起こる仕組みが分かったり、それが治せるかもしれないということを知ったんです。
ちょうどその当時、小説『世界の中心で愛を叫ぶ』を読んでいて、白血病とかエイズとか、(当時の技術では)もう治らない病気があることを知りました。「科学がこんなに進歩しているのに」という気持ちを抱いた私は、その後、理学・生命科学系に進学したんです。
渡辺:大学ではどんな研究をしていましたか?
濱口 : 「神経」の研究です。細長く延びる神経の軸索を鞘状に包む「ミエリン(=髄鞘:ずいしょう)」というものがあります。神経パルスの伝導にとても重要なものですが、その再生するメカニズムについて研究していました。生き物の体は、例えば時間が経つと傷が治るように、再生する仕組みが備わっているわけですが、それと同じようにミエリンも再生をすることが知られています。ところが、多発性硬化症という病気では、ミエリンがなくなっては再生してを繰り返し、やがて再生がうまくできなくなります。悪化させる因子については多く知られていますが、一方で、再生を促す因子については報告がほとんどありません。どのようにして再生されるのか、そのメカニズムを知ろうと考えたんです。
渡辺:話を伺っていると神経の研究はとてもやりがいがあるように思いますが、なぜアカデミアの道を進み続けなかったのでしょうか?
濱口 : 将来、自分が博士号を取得してから何をしようかなと思ったときに、自分の興味だけで走っていくのではなく、社会の役に立てるようになりたいと思ったんです。それに、薬を開発して患者さんに届けるには、自分が持っている知識・技術だけではダメなんだと思ったのもあります。薬の研究をしていると、マウスで効くけど人には効かないということがたくさんあります。種差もありますし、私の実験結果からは、人に大きな効果をもたらすと言えるような実験結果が見当たらなかったんです。
私一人の力は知れている。一方で、欧米では、製薬企業が薬の開発を行うときに、その技術シーズをベンチャーに求めることが多々あります。欧米での医薬品開発は進んでいる。薬の開発をしようとしたときに、様々な人の知識が活用される仕組みがある。でも日本にはまだそういった仕組みがほとんどありません。その仕組みづくりをやりたいって思いました。
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