学校を起点に「人」の学びを進化させる 超異分野学会 リバネス教育総研パネルディスカッションダイジェスト

学校を起点に「人」の学びを進化させる 超異分野学会 リバネス教育総研パネルディスカッションダイジェスト

株式会社リバネス教育総合センターでは、2021年3月6日(土)に開催された超異分野学会内で、「学校を起点に「人」の学びを進化させる」をテーマにパネルディスカッションを実施しました。
(登壇者など詳細はこちらから:https://hic.lne.st/conference/hic2021/

*********

井上
まずは登壇者の皆さんの自己紹介から始めましょう。本日はどうぞよろしくお願いします!

浅野氏
よろしくお願いします。経済産業省の浅野大介です。経産省では、2018年から、未来の教室の取り組みで、企業の方々と一緒に、ワクワクする教育プログラムの開発、実証を行っています。今年度は、企業や研究機関とともに、実社会に即したテーマで学ぶ教育コンテンツを集結させた「STEAMライブラリー」を立ち上げました。STEAMライブラリーからは、先生方が動画教材や指導案も含め、全て無料でダウンロードして活用することができます。実は、こどもたちが自分たちでダウンロードしてくれることも期待しています。

井上
答えがあるものの正解を見つけるかではなく、答えがないものへどう取り組んでいくか。このシフトを経済産業省が旗をあげて言ってらっしゃいますね。そして、その真ん中に「ワクワク」がある。今日はぜひ、いろいろ聞かせてください。続いて折笠さん、よろしくお願いします。

折笠氏
日鉄エンジニアリング株式会社の折笠光子です。どうぞよろしくお願いします。弊社では、2015年から、情熱・先端Mission-Eという、高校生向けのエンジニアリング教育プログラムをリバネスさんと一緒に実施しています。アイデアをすところからゼロから始め物の設計・製作を行う取り組みで、毎年、弊社の若手エンジニアも一緒になって取り組んでいます。

井上
私も、最終発表会の審査員として参加したことがあるのですが、その時印象的だったのが、一緒にやっている大人のエンジニアも中高生たちには負けるまいと本気で一生懸命やっていたところです。今日はよろしくお願いします!そして続いて、N高等学校の吉村さん、お願いします!

吉村氏
N高等学校の吉村総一郎です。現在、N高等学校副校長を務めています。4月に新設されるS高等学校では、校長に就任予定です。N高は、通信制高校の制度を「活用して」ネットの高校を作ろうと設立された学校で、日本一の生徒数を誇っています。今は、約16,000人の生徒がいます。いろいろな新しいチャレンジも行っていて、今は、VR空間で学べる授業を開発しています。

井上
それは新しい!ぜひいろいろ聞かせてください!では早速ディスカッションへ入っていきたいと思います。今、日本中でSTEAMライブラリーのような新しい学びが起こっています。ただ、これを一部の生徒たちだけではなく、どのように広げていくことができるのでしょうか。リバネスでは、創業当初からサイエンスの出前実験教室を行っているのですが、最初は母校の先生に頼み込んで理科の授業の中でやらせてもらいました。いま、探究活動が盛んになってきて、「研究活動」という新しい接点が生まれてきています。ぜひ、どのようにもっと広げていけるのか、みなさんのご意見をお聞かせください。

浅野氏
広げていくこと、それはとても重要なことです。正にそれをSTEAMライブラリーの取り組みでやろうとしていることです。先ほどお話があった、日鉄エンジニアリングのプロジェクトや、N高が取り組んでいるさまざまな部活動の取り組みなどを、どう広げることができるのか、それは本当にリアルな課題です。企業の人たちが自前で教育活動に参加してくれるにはどうしたら良いんでしょうか?

折笠氏
企業の教育活動が、社員の人材開発や採用につながるという副次的効果確かにあります。中高生のに接点を持つことで、将来的に会社へ就職してくれることり得ると思います。また、人材育成の視点でも価値があります。実は、中高生の探究活動への取り組み方は、大人のエンジニアにとっても非常に刺激的なんです。今の中高生は自分フリーの解析ソフトを見つけてきたり、3Dプリンターを活用していろんな部品を作ったりと、彼ら、彼女らの能力にいつも驚かされます。ただ、残念なことに、それだけだと続かないのです。普段、忙しく仕事をしている社員たちに、さらにこのプロジェクトに参加してもらう、となると、やはり負担も大きいのが現状です。

井上
生徒たちのプロジェクトに助言をしたり、大人のエンジニアの人たちも同じプロジェクトに参加して自分たちの解決策を練ったりと、確かに多くの時間がかかりますね。N高の吉村さんから、いかがでしょうか。このような教育活動を、どう普及させていくことができるのか。

吉村氏
私たちは、基本的にビジネスとしても成立するように教育に向き合っています。それは、ずばり、「良い教育には価値がある」と信じているからです。教育に対して、対価をお支払いしてくれる親御さんからお金を頂いて、その機会を提供するという考え方は重要だと思っています。

浅野氏
同じく「未来の教室の取り組み」で、国内の専門高校をネットでつないでプロジェクトの成果を共有したり、ディスカッションをするSTEAM探究ネットワークを作る取り組みもしています。ロボティクスの分野などそれぞれのプロジェクトについて、大学生や企業の方がメンターとして参加してくれています。特に、高専生については、地元の企業とコミュニケーションを取りながらやっているのはキーだと思います。地元企業にとって、地元の優秀な人材との接点は価値だからです。そう考えると、大学生の「就職」の考え方ももっとフレキシブルでも良いのではないのでしょうか。大学へ行って勉強や研究するだけではなくて、大学に在学しながら、どこか会社に就職しても良いんじゃないか。よく話題になっている、いつ就職活動を始めて、いつ内定を出すのか、などの議論ではなくて、どのように社会と大学の接点をもつものか、「就職」という概念についてもっと大きな議論がしたいですよね。

折笠氏
弊社でも大学生を対象に、2〜3週間のインターンシップ行っています。その中で、お互いの相性をみて、そこから就職へつながるケースはここ数年とても増えています。でも、一方で、大学生になってからでは遅いのです。最近は、理系といってもパソコン・インターネット上で完結してしまうものが多いですが、中学校や高校など、それ以前にものづくりの経験や楽しさに触れてほしいと思っています。

吉村氏
全く同意です。大学生からでは遅いですよね。先ほどお話したように、本当に良いプログラムならお金を出しても学ばせたいという親御さんはいらっしゃいます。別の言い方で言うと、日鉄エンジニアリングさんが行っているプロジェクトのような、めちゃめちゃマニアックな分野においても、そこに情熱を持って「やりたい!」と言ってくる生徒さんはきっと全国にたくさんいます。そういう子たちに、広く機会を提供してあげたいですね。

折笠氏
残念ながら、企業の大部分の評価はどれくらい利益をあげているかで決まります。でも、利益だけではない企業の評価方法を追求したいと思います。経団連1%クラブというのがあって、収益の1%社会貢献活動に使うことが推奨されていますが、今の時代、私は1%では少ないと思っています。100億の収益であれば、1億程度です企業はもっと社会課題の解決に貢献できると思いますが、経営者が利益以外の部分でも評価されるようにならないと、増えてはいきません。

井上
そのところ、資本主義のど真ん中?である経産省がいらっしゃいます 笑。浅野さんどう思われますか?お金を稼ぐことだけが重要なことではないのでは?

浅野氏
経済産業省では、企業の価値を評価するのに、企業がどれだけ社員のウェルビーイングについて考慮しているかを示す健康経営銘柄や、デジタルトランスフォーメーションを成功させているかを示す、デジタルトランスフォーメーション銘柄などの新たな評価軸を作りました。人を育てる会社に付与する銘柄、それも、自社の社員だけでなく、次世代を含め人材育成に貢献する企業に与える、例えば「人材投資銘柄」みいたな評価がされる仕組みなんかもありかもしれませんね。

井上
とても良いアイデアですね!未来に投資すればするほど、絶対に良い未来をつくることができるんです。これは紛れもない事実だと思っています。リバネスでは、今回、経産省の「未来の教室」STEAMライブラリーの取り組みの助成を委託業務として受託させていただき、台風でも発電できる風力発電の技術を持ったベンチャー企業の技術をテーマに、教育プログラムを開発しました。このように、国からの助成金などを活用して、例えば最先端のテクノロジーを生み出しているベンチャーの技術を次世代に伝えていく仕組みを作っていきたいです。例えば、NEDOなどのベンチャーが技術の社会実装のために活用している助成金プログラムを進める際に、同時にその技術の教育プログラムが生まれる仕組みを作るというのも必要かもしれません。

井上
あっという間に時間がきてしまいました!最後にみなさんから、未来の「学校」とはどんな風になっていくべきか、どんな位置付けになるのか、お考えをいただいてこの会を終わりにしたいと思っています。ここから教育は大きな転換期を迎えると思っています。どう意識を変えて何を仕掛けられるか、勝負の時です。

浅野氏
今後の学校は、ひとりひとりの生徒が「自分の仕事をしている」ようになれば良いと思っています。「仕事」と括れる学びをする場所です。もちろん、教科の基礎を学ぶような筋トレをしっかりやらないと途中から伸びていかない。ただ、筋トレは個人のニーズ、ペースにあった個別トレーニングプランでやっている。そしてその他の時間は、探究プロジェクトをやっているような、そんな場所にしたいですね。

折笠氏
当社はエンジアリング会社として、日本のエンジニアリング技術をこれからも発展させていきたいと考えています。そのときに、やはり、教科書から学ぶ知識だけではなく、学んだことを社会に実装する、ものを作る、実際に手で触って動かしてみるような機会をもっと教育の中に入れていただきたいと思っています。

吉村氏
井上さんが言っていること、そして未来の教室のコンセプトにもあるように、私は勉強は「ワクワク」が大切だと思っています。生徒さんは皆、それぞれの学校や、もちろんN高の生徒もN高だけに閉じこもる必要はないのです。遠くない未来に、全ての学校がインターネットを通して繋がるときがきます。すると、特定のテーマを学びたいひとに「集まれ!」と声をかけると、日本中から生徒が集まって来て、みんなで学ぶことができる、そんなことを実現したいですね!

井上
皆さん、ありがとうございます!全部、すぐやりましょう 笑!
最後に私から。私は、答えのない問いに取り組む学びを通して、自分で正解を作っていける人、そういう人たちと未来に一緒に仕事をしていきたいと思っています。学校は、決まった知識を学ぶ場所ではなく、「学び方を学ぶ」場所、知識をどう獲得するのか、そのやり方を学ぶ場所になっていくと良いと思っています。本日はどうもありがとうございました!