「地球は青かった」〜人類初の宇宙飛行士〜

「地球は青かった」〜人類初の宇宙飛行士〜

1961年4月12日、ユーリィ・ガガーリンが人類で初めて宇宙飛行を行ないました。たったひとりで人工衛星Vostok1号に乗り込み、地球の大気圏外を1時間50分弱かけて1周し、無事に帰還したのです。

地球はなぜ青い?

「地球は青かった」

ガガーリンと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはこの言葉です。人類で初めて地球から脱出し、その姿を外側から見たガガーリン。宇宙空間の暗闇を背景に地球が青く輝いている光景は、とても美しく、心を打つものだったでしょう。

地球は、その表面のおよそ70%が海で覆われています。「水の惑星」とも呼ばれる地球を特徴づける、他の惑星と大きく異なる点は、この海の存在です。豊富に存在する液体の水は、隕石などに含まれる有機物が溶け出し、反応を重ねる場となりました。そして約40億年前に生命が生まれ、長い時間をかけて進化した結果、現在のさまざまな生き物が存在しているのです。 いま現在も多くの生命を抱き続ける青い海。なぜ、海は青く見えるのでしょうか。その理由は、太陽の光と水にあります。 太陽光にはさまざまな色(波長)の光が含まれており、それぞれの光は,色ごとに異なるエネルギーを持っています。たとえば虹の色で考えると、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順でエネルギーが強くなっていきます。そして物質が赤や青などさまざまな色に見えるのは、物質ごとに固有のエネルギーの光を吸収し、残りが反射して私たちの目に入ってくるためです。 水はエネルギーの低い光ほど吸収しやすいという性質があるため、太陽光が海の中に入ると、エネルギーの低い赤、橙、黄、緑の色は吸収されてしまいます。また、藍、紫も推進が深くなると吸収されてしまいます。ここで残っているのは青色だけ。この青色の光が海の中にある小さい粒(プランクトンやゴミなど)に当たって反射され、私たちには海が青く見えるのです。

ガガーリンも、宇宙から海の青さを見たはずです。でも実は、地球が青く見えた理由はそれだけではありませんでした。

青い大気のヴェール

ガガーリンが飛行したのは、地上から181〜372 kmの高度。直径およそ13,000 kmの地球全体を見るにはあまりにも近すぎて、丸い全体像を見ることはできなかったはずです。実は、「地球は青かった」は、「地球は青いヴェールをまとった花嫁のようだった」が本当だという説もあるのです。この「ヴェール」とは、大気のこと。地球の外側を覆っている大気の層が青く見えたのです。

晴れた日の昼間に外に出て見上げてみると、そこには青空が広がっていますよね。あの空の色は、「レイリー散乱」という現象によって説明されています。レイリー散乱とは、光の波長よりも小さな物体に光が当たることで、散乱すること。大気には、二酸化炭素、酸素、窒素などの非常に小さい分子があり、これに当たった光は四方八方に散らばります。レイリー散乱では、青色は赤色よりもおよそ5倍も強く散乱されるため、空は青色に見えるのです。

ガガーリンが見たもう一つの青は、この空の色。彼は人類で初めて、私たちの反対側から青空を見た人でもあるのです。

青い地球を見てみたい

青く輝く地球の姿は、今ではNASAのウェブサイトなどで私たちも見ることができます。でもいつの日か、ぜひこの目で見てみたいもの。 人類初の宇宙飛行から40年近く経った現在、民間の宇宙旅行も企画されはじめ、すでに宇宙飛行士以外でも地球を飛び出した人がいるほど、宇宙は近づいてきています。もしかしたらあと数十年もしたら、観光ツアーのひとつとして宇宙へ飛び立てる日も来るかもしれませんね。

【参考文献】

国土交通省 中国地方整備局 宇部港湾事務局 みなとWeb!
http://www.pa.cgr.mlit.go.jp/ube/faq/faq07.html
空の偏光特性の実験
http://www-antenna.ee.titech.ac.jp/~hira/hobby/edu/em/sky_polarization/index-j.html
Jet Propulsion Laboratory
http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA11066

(文責:磯貝 里子)